――最新映画『初恋〜お父さん、チビがいなくなりました』では、倍賞千恵子さんと藤竜也さんという名優2人が夫婦を、市川さんはその娘を演じています。出演を決められたのは、この映画の特に何に惹かれたからですか?

市川:大きかったのは、倍賞さんと藤さんとご一緒できることでした。お二人の娘ですからね! 倍賞さんは、本当にチャーミングな方でした。すごく可愛らしい。撮影期間中は、誰よりも倍賞さんが一番出番も多いし、朝早くから夜まで地方でロケをしていたりと、色々とご負担が大きかったと思うんです。

撮影も中盤を過ぎて、スタッフにも疲れが見えていた頃、倍賞さんがいらっしゃると、現場の空気が変わるんですよ。スタッフが、みんな笑顔になる。倍賞さんのちょっとした発言や仕草が可愛らしかったり面白かったり優しかったりして、本当に素敵だな思いました。

誰もが少し緊張している空気を、自然な形で柔らかくしてくださる。倍賞さんのように、心から素敵だなと思う同性の先輩にお会いできることは、とてもうれしいです。こんなにも人は魅力的に生きていけるんだという、勇気をもらえるというか。

藤さんもとても素敵で、可愛らしい方でした。映画の中では、かなり偏屈なお父さんの役なのに(笑)。佇まいに、倍賞さんへの尊敬の念を感じましたが、年下の私たちにも、大勢のスタッフにも、敬意を持って接してくださって。藤さんも、ご自身の好きなものを大事にされている方なのではないかなと感じました。

お二人とも、お芝居も素敵ですが、何より人としての魅力を感じました。本当に、ご褒美みたいな現場でした。生きていると、素敵な方にお会いできるものだなぁ、と。

――先ほどご自身のことを不器用だとおっしゃっていましたが、役と向かい合って、例えば壁にぶつかった時は、これまでどんな風にその壁を乗り越えてきたんでしょうか。

市川:煮詰まることも多いのですが、私の場合、最後の最後に楽観的なところ、「まいっか」と思えるところがあるんです(笑)。あるとき、“苦しい目線”でしかものが見られないのはもったいないなと思ったことがあって。すごく忙しくて苦しかった時に、「本当にそこまで苦しいのか?」と自分に聞いてみたんです。

そしたら、「あれ? そうでもないぞ」って答えが聞こえた(笑)。ちょっとの問いかけで、自分の中のリズムが変わりました。「苦しい」って思ってる時に、一瞬自分を俯瞰で見て、「あ、苦しがってる」と思うと、それだけでちょっと息継ぎの隙間ができるというか。

自分の中にはびこる自主規制と自己暗示から気持ちを解放すると、少し自由になれると思うんです。「私はこうだから、こういうのは苦手」「こういうのは好き」と、大人になって、自分のことをわかっていくのは、ラクになることかもしれない。でも逆に言えば、それほど怖いことはないなとも思うんです。

人は変化をする生き物だから、過去の物差しが、今の自分には通用しないことも多い。それなのに、その方が安心だし、傷つかない、失敗しないっていう理由で、決断をしてしまったり。そうすると、ラクかもしれないけれど、楽しくはないなって。