なぜ物理学者は「数学」を「実生活に役立つ」と説くようになったのか

「自然の神秘」と「人類の叡智」
志村 史夫 プロフィール

自然は人間に関係なく存在するが、数学自体が自然界に存在するわけではないからである。

私は、物理学の分野で数学の恩恵にあずかったのであるが、誰にとっても「数学」、あるいは「数学的な考え方」が、日常生活においても大いに役立つものであることを痛感し、人生、「数学の面白さ」と「数学は実生活に役立つもの」ということを知らずに終えるのは、いかにももったいないという確信に至った。

そして、『いやでも物理が面白くなる』の姉妹編として書き上げたのが、4月に上梓した『いやでも数学が面白くなる』である。私の意図は『物理』と同様、「数学をちょっとでも学ぶと日常生活、人生がとても楽しく豊かになる」ということを知ってもらうことである。

私は、数学あるいは数式は、「外国語」の一種だと思っている。外国へ行ったとき、外国語ができなくても何とかなるとは思うが、多少でも外国語が理解できたほうが何かと便利だし、滞在中の楽しみも格段に拡がる。

それと同じように、数学あるいは数式という「外国語」は、自然現象のみならず社会現象を理解するのに大いに役立つのである。

自然の神秘を垣間見る『いやでも物理が面白くなる〈新版〉』と、人類の叡智を身近に感じさせてくれるであろう『いやでも数学が面白くなる』の2冊が、読者の楽しく、豊かな人生への「虹のかけはし」になってくれれば、著者にとって、これ以上の喜びはない。

虹Photo by Pixabay

積み重ねて10冊目に

ところで、ブルーバックスが「科学をあなたのポケットに」という「発刊のことば」とともに登場したのは1963年、私が中学3年生のときだった。以来、現在までのおよそ55年間で、私は少なく見積もっても100冊以上のブルーバックスを読んでいる。

ブルーバックスは、私に「自然の神秘」と「人類の叡智」をわかりやすく教えてくれた。また、自分が科学の分野で仕事をするようになって、ブルーバックスの執筆者は私の憧れにもなった。

ブルーバックスに対し、このような特別の思い入れを持つ私が、専門である半導体から古代技術まで、さまざまな分野でブルーバックス(『数学』がちょうど10冊目になる)を書かせていただいたことを心から嬉しく、光栄に思う。

また、「物理」と「数学」という分野に限れば、私の生涯最後の著書になるだろう2冊をブルーバックスから上梓できることに、特別の感慨を覚える。

いやでも数学が面白くなる 「勝利の方程式」は解けるのか?

「数学」は人類史上最大の発明だ!「ビジネス上の決断」や「人生の選択」で役立つ数学的思考法があった! しかも、算数よりずっとやさしい!? おどろきのエピソード満載で語る、「超」入門書。数式アレルギーがあっという間になくなる!

いやでも物理が面白くなる〈新版〉「止まれ」の信号はなぜ世界共通で赤なのか?

ほんとうは驚くほど面白い物理の話。肉屋の肉はなぜ美味しそうに見える? 人工衛星はなぜ地球を周回できる? 朝日や夕日はなぜ赤い? 理科コンプレックスがあっという間になくなる話が満載!