日産の生存競争にどこまでも関与したがる日仏政府の「執着の異常」

責任を取る気はないくせに…

それにしても、しつこい

仏ルノーが、日産自動車に対し、経営統合を持ちかけていることが明らかになった。
カルロス・ゴーン事件を機に、ルノー、日産、三菱自動車の連合体制は維持されると目されていたが、ルノーとその背後にいる仏政府の統合意欲は失われておらず、3社連合の行方は波乱含みとなってきた。

それにしても、マクロン政権はしつこい。

ゴーン事件は、ルノーCEOへの続投意欲を持つゴーン被告に対し、18年2月、マクロン政権が「日産との不可逆的な関係作り」を約束させたことがきっかけだった。

それを機に、日産の独立性を認め、仏政府とルノーから距離を置かせることで、日産を自らの「天領」としていたゴーン被告の態度は変わる。それを見て、日産幹部は「ゴーン切り」に入り、社内調査を通じて不正を見つけ、6月に導入されたばかりの司法取引に持ち込んで、11月のゴーン逮捕に至った。

そこには、安倍晋三首相の信任が厚い経済産業省出身の今井尚哉首相補佐官が主導する、官邸の「フランスに日産を渡してはならない」という思惑があり、その意向を汲んだ検察が、「司法取引を使って復権を果たしたい」という意欲を持って臨んだという経緯があった。

 

そういう意味で、ゴーン事件は国策捜査だが、失業率の高さに反比例するように支持率が低下し、黄色いベスト運動が続くマクロン政権は、ゴーン事件を仕掛けられても諦めるわけにはいかなかった。

ゴーン被告は、仏司法当局も捜査を開始した反逆の人。したたかで計算高いことで知られるレバシリ(レバノンとシリアの意)のゴーン被告から、貴族出身のジャンドミニク・スナール氏に役者が代わったことで、仕切り直しというわけである。

経産省の露骨な関与が、18年4月から5月にかけた「日産内部メール(日経ビジネス電子版・19年4月17日~22日配信)」で明らかになっている。

日産専務執行役の川口均氏は、4月28日、ゴーン被告と西川広人社長に向けて、次のようなメールを送っている。

<4月9日に経済産業省の多田局長(明弘・当時の製造産業局長)から経済・財務省のフォーレ局長に書簡を送ったものの、フランス側からの返事がなかったので、経産省は再度、世耕(弘成)大臣から書簡を送ることに決めました>

経営統合を巡る水面下の駆け引きが、日仏政府の間で始まっていた。メールのやり取りは続き、5月21日、川口専務執行役は、ゴーン被告と西川社長宛に、APE(仏政府保有株式監督庁)のピアル長官と経産省が議論した経産省作成の「覚書案」を送付している。

川口氏は、<ご存じの通り、我々は必要に応じて仏政府/APEにブレーキをかけるために、日産の後ろにとどまって支援してもらえるよう経産省にお願いしてきました>といいつつ、この「覚書案」が、自分たちの考えからややかけ離れていると不満を述べている。

その「覚書案」は、以下のように日産の独立性を求めている。

<ルノーの取締役によって表明されるルノー日産アライアンス強化についての意見は、ルノーの見解のみを表すものであり、日産やその取締役会の自由な意思決定に影響を与えるものではない>

<仮に仏政府が株主として日産に特定の提案等をする場合、いかなる時も日本政府(経済産業省)に通知することにより、我々は(中略)ルノー・日産アライアンスの双方の円滑な対話が可能となる>

ルノーは仏政府そのものだ。第2次世界大戦でドイツ軍の統治下に置かれていたこともあって、ルノーは解放後、資産を没収され、50年間も政府管理下にあった。今も15%の株式を保有する筆頭株主は政府で、ルノーは経済活動を国が主導する「国家資本主義」の代表的企業といえよう。

 
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