朝ドラ『なつぞら』で起きた「見事な転調」を賞賛すべきだ

圧倒的なきらびやかさ
堀井 憲一郎 プロフィール

おじいさんはわかったといい、みんなで天陽くんの畑を耕した。

頬っかむりして働くなつはとてもいい。頬かむりは有無を言わさずかわいいです。

12話になって、9年経って、なつは高校3年生、広瀬すずに代わりました。

役者が代わって、空気が変わった。

広瀬すずという女優が持っている「きらびやかな陽気さ」がドラマ全体を覆っている。朝ドラとして、とても正しい空気である。子役時代に醸し出されていた「喪われたものの哀しみ」も薄らいだ。これはこれでよかった。

 

圧倒的なきらびやかさ

『半分、青い』のときも似たような転調があった。

最初の子役は、「片耳が聞こえない」という状態になって、どことなく寂しさを抱えた主人公を演じて、すごくよかった。

主演が永野芽郁に代わったとたん、彼女もまた、圧倒的なきらびやかさをまとっているから、その存在だけでまわりを明るくしていった。見事な転調だった。

今回も、広瀬すずになって、調子が一転した。

兄と妹とは生き別れのまま、という部分を、ひごろは感じさせない。広瀬すずの力だろう。

正統派の朝ドラのトーンになっている。

でも彼女は「喪失」を抱えている。これからまた垣間見えることもあるだろう。ときどき、胸に迫る子供の時代があったことを、おもいだせばいい。

「おまえには家族はおらん。でもわしらがおる」

そういうドラマだから。