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『砂の器』映像化4作を見比べてわかる「若者の痛み」の意外な変化

未来を信じられない若者たち

何度も映像化された名作

松本清張の『砂の器』が出版されたのは1961年のことである。昭和でいえば36年。

いまから58年前になる。

先だって、2019年の3月28日に「フジテレビ開局60周年」ドラマとして放映されていた。60周年に58年前の作品をドラマ化したわけである。タイムカプセルを開けるような作業だけれど、さすがに舞台は現代、ハロウィンの日の渋谷で物語は始まっていた。

『砂の器』は何度も映像化されている。

松本清張という作家の持つ妖しい力を、まざまざと感じてしまう。

映画になったのは一度だけだ。1974年に監督が野村芳太郎、主演はメイン刑事役の丹波哲郎(この物語の主人公を誰に設定するかは、製作者の意図によって変わってくる)。

松竹の大作映画だった。設定などは原作にかなり近い。

また、この映画が『砂の器』映像化の型を作ったと言える。のちの作品の多くは、この型をなぞることになる。

映画化の3年後、1977年にはフジテレビが6回の連続ドラマにしている。主演は仲代達矢。

2004年にはTBSの連続ドラマになった。主演は中居正広。

今年2019年の『砂の器』の主演は東山紀之である。

これ以外にも映像化されているのだが、とりあえず今回はこの4つを見比べてみた。かなり時代が反映される作りになっている。

 

キャストを並べて見えてくること

この物語のおもな登場人物は5人である。

まず犯人を追うメインの刑事がいる。彼は物語の解説役でもある。

1974年映画で脚本を担当した橋本忍が、彼を「人形浄瑠璃における義太夫語りの役」に見立てたと言っていた。

刑事役はもう一人、若い刑事がいる。

そして、物語の中心にいるのが若い天才音楽家である。役名は和賀英良(わがえいりょう)。ピアニストで、作曲家でもある。

彼には婚約者がいる。それと別に愛人がいる。つまり女が二人いる。婚約者が「社会的成功の象徴」であり、愛人は「ダークサイドの象徴」となっている。

この5人である。

1974年の映画、1977年のフジテレビ連続ドラマ、2004年のTBS連続ドラマ、2019年フジテレビ単発ドラマで、この5人を演じた役者を並べてみるとこうなる。

制作年:1974年→1977年→2004年→2019年
メインの刑事:丹波哲郎→仲代達矢→渡辺謙→東山紀之
若い刑事:森田健作→山本亘→永井大→野村周平
天才音楽家:加藤剛→田村正和→中居正広→中島健人
音楽家愛人;島田陽子→神崎愛→佐藤仁美→土屋太鳳
音楽家婚約者:山口果林→小川知子→京野ことみ→桜井日奈子

こうやって並べると、なんだか胸がざわついてくる。1974年の映画で島田陽子は脱いでいて、それが当時すごく話題になったことをおもいだしてしまう。