鳥貴族の大失速が教える「商売の価格設定」こんなに難しい

「値上げ」はどれだけ影響した…?
加谷 珪一 プロフィール

一方、QBハウスやヤマト運輸などにはこうした心配はない。

理髪店は毎日通うところではないので、同一商圏に何件ものライバル店が出店するケースは少ない。ひとつの商圏に1店というケースがほとんどなので、仮に値上げが行われても、わざわざ顧客は他の駅まで行って髪を切ることはない。しかも理髪店に行かないからといって他の手段で代替することは難しいので、結局、同じ店に行く可能性が高い。

宅配についても日本には事実上、競合は2社しかいないので、値上げを行っても、顧客は引き続き同じ会社に荷物を依頼せざるを得ないという事情がある。

 

値上げの耐性がもっとも強いのは電力やガスといった事実上の独占企業である。日本はデフレ、デフレといわれてきたが、こうした業種に限ってはデフレなどどこ吹く風であり、他の業種では信じられない頻度で値上げを繰り返している。

電気料金は過去10年で約20%、プロパンガス料金は13%、上下水道は7%も料金が上がった。どれだけ値上げしても顧客は他に代替手段がないので彼等は平気だ。

経済学の分野では、価格変動に対する需要の変化のことを「価格弾力性」と呼ぶ。他に代替手段がない商品やサービスは価格が変動しても需要が大きく変化することはないが、他に代替手段がある場合、価格を上げると需要そのものが減少してしまう。こうした業態の場合、経済がよくならない限り、常に値上げの影響におびえながら経営を続けることになる。