元SKE48でタレントの矢方美紀さんが乳がんを公表したのは2018年4月、25歳のときのこと。乳がんを患って左乳房全摘する手術の直前だった。ステージⅠの乳がんと診断され、出術前の再検査でステージⅡB、左乳房全摘後にはステージⅢAと診断された。

その後、抗がん剤治療、放射線治療を経て、ホルモン療法をしながら、現在はかねてからの夢だった声優への道に向かって歩き始めている。

矢方さんは、NHKで放送された番組「#乳がんダイアリー 矢方美紀」や自撮り動画の日記をもとに、当時を振り返りながら今の気持ちをまとめた著書を刊行する。それが『きっと大丈夫。~私の乳がんダイアリー~』(双葉社)だ。

実は乳がん公表時には、乳房再建手術も予定されていると報じられていたが、矢方さんはその後「再建手術をしない」という決断をした。それはなぜなのか、経緯と本心を、『きっと大丈夫。』から、抜粋掲載をする。女性の11人に1人が乳がんになると言われている今、20代で乳がんになった矢方さんの、率直な想いがそこにはある――。

「再建をしない」と決めた

乳房全摘手術をすることを決めたときから、この「乳房の再建」ということが、私の中ですごく大きな課題になっていました。

最初は「再建」を、治療の一環として当たり前のものとして考えていました。ところが、先生に再建についてどうするのかを聞かれたとき、自分自身、胸がなくて違和感があるのと、服を着たときにバランスが悪いということ以外に、そんなに生活に支障がないように思えました。担当のお医者さんも、そんなに私に再建を強制しません。それで、自分が再建はしなくていいと思えば、それでいいのかなと思うようになりました。

「じゃあ再建してない人ってどれくらいいるんだろう」と思って調べていたときに、ある写真家が、乳がん経験のある外国人女性たちを撮っている写真集をたまたま見つけたのです。その中には、再建はしないけれども、胸に刺青を入れて、美しさを新しい形で表現しているという人もいました。彼女たちの写真を見て、「すごい、いい生き方だな。全然、別に変ではないし、格好いいな」と思いました。

写真集『Beauty after breast cancer』の特設サイト

いまのままでもいいかなという思いを改めて強くしました。それに、再建するとなると、同じ場所を切って、入れてふくらませて、中のものを入れ替えて、そこからまた乳輪と乳頭の再建をしてとなると、すごく時間がかかるし、それはそれで手術が不安になりました。

もちろんそれで理想の胸に近づくとは思いますが、もし自分のイメージと違ってしまったらどうしようという怖さもあったし、別にいまの状態が100%ではないけれど、不便ではないなと思って、再建はしないことを決めました。

それに、私がいまやりたいことは、声のお仕事、声優なのです。声が元気なら、胸があるかないかは、もう自分の気持ち次第でどうにかなるのかな、とも考えたのです。

でも、私が「再建しないです」と言ったときに、それがニュースになって、「それはおかしいだろ」「女は胸でしょ」といった発言をしている人もいました。

もちろん、それはそれで人それぞれ違った考えを持っていて当然だと思います。再建に対する考え方には、個人差があります。胸がないことで、すごく喪失感を抱く人は再建すればいいし、私のように、なくてもいいやと思うなら、そのままでもいいと思うのです。