国民の頼みは「ツイッター」…混迷ベネズエラ、メディア崩壊の現実

人道危機の背景にある「政府の情報統制」
野田 香奈子 プロフィール

消えていく人々

ガンソンはさらに、昨年8月にベネズエラ北部沖でマグニチュード7.3の地震が発生したことを踏まえ、ベネズエラでの大きな地震を懸念している。

「今後、地震が起きたとき、マドゥロ政府はすばやく正確なニュースを放送しないだろう。過去には、独立放送局がいち早く状況を把握しようとして、アメリカ地質調査所(USGS)のデータを利用したために、ベネズエラ政府に起訴されている。停電や、その他の公共サービスが途絶した場合にも、これと同じことが起きている」

 

現に今回の大規模停電でも、マドゥロは、原因について「サボタージュ」だと言うだけで、詳細については何も公表せず、ただ「米国のトランプ大統領が主導し、傀儡であるグアイド暫定大統領が関与したサイバー攻撃が原因である」と繰り返すばかりだ。

そして停電後、電力公社の社員や、ジャーナリストなど、マドゥロの公表する情報とは異なる見解の現地情報をSNSで発信した人たちが次々と拘束された。そして、停電に怒った市民が抗議運動を行った際には、暗殺部隊が送られるほどの苛烈な弾圧が行われた。

病院では、透析患者や新生児など多数が命を落とした。ベネズエラ国民議会や、現地のNGOなどは必死に病院での死亡者数などのデータをかき集めたが、ベネズエラ全土でどれほどの被害が出たのかは、いまだ不明なままだ。

情報が届かない人たちの状況について、メリダ在住のライター、ダビッド・パラは、「インターネットに接続するすべを持たない人にとって、これらの出来事は起きていないも同然だ。直接弾圧の被害者にあった人たちにしてみれば、政府の横暴を糾弾しようにも、訴える先がない。たとえ訴えても、当局は政府のプロパガンダしか真実と考えない」と話す。

さらに、社会で起きている出来事を市民が共有できないため、「人々はますます孤立し、疎遠になっている。言論統制している限り、体制側は国内外で非難される恐れがない。なんでもやりたい放題のマドゥロは、弾圧をさらに強めている」と指摘する。

4月13日に行われた軍事パレードで、政府側の民兵の前に姿を見せたマドゥロ大統領(中央、Photo by gettyimages)

ボリバル州シウダーグアヤナ在住のライターで、ニューヨークタイムズ紙にも寄稿しているカルロス・エルナンデスは、長期間の停電を経験して、「ベネズエラではインターネット以外に情報を得る手段がないことを改めて思い知らされた」と言う。

「国民の大半は、実際に何が起きているのか、あまりわかってないと思う。全員がTwitterをやっているわけでなし、ニュースが口伝えで広がるせいもあって、デマが溢れている。

昨日も近所の人が、グアイドはマドゥロと交渉を始めたと言っていた。明らかに嘘だけど、彼女はそれを従兄弟から聞いたそうだ。

定期的に情報にアクセスできない上に、ジャーナリスト不足で、そもそも報道されない事件も多い。僕の住む所は、ブラジル国境の武装したギャングが管理している違法な鉱山に近いから、そこの住民からひどい話をたくさん聞いた。麻薬組織が虐殺を行い、死体の山をトラックに乗せて共同墓地まで運んできたとか…。

確実にわかっているのは、行方不明者が続出していることだ」