10連休だ。
何か普段とは違う本でも読もうか、と思っている方に、おすすめの、上下2巻、600ページ以上の長編がある。
ウォルター・アイザックソン著『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(土方奈美訳、文藝春秋)だ。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、いうまでもなく、美術史上、最も有名な画家だ。ルネサンス時代の人で、1452年にイタリア、フィレンツェで生まれ、1519年に亡くなった。
「モナ・リザ」「最後の晩餐」を見たことのない人はいないだろう。だが、レオナルド・ダ・ヴィンチそのひとについては、西洋絵画、あるいはルネサンスに詳しい人以外は、それほど知らないのではないか。
たとえば、髭だらけの肖像画が有名だが、あれは歳をとってからのもので、若い頃の肖像画は、かなりの美男子なのだ。
ダ・ヴィンチは有名だが、その実像は知られていない。
著者のアイザックソンは、スティーブ・ジョブズの伝記を書いた人でもある。その前にはベンジャミン・フランクリンの伝記も書いている。つまり、美術の専門家ではない。
だから、美術の専門家でなくても、わかるように書かれている。
私はクラシック音楽や歌舞伎の本を何冊か書いてきたが、どちらも1600年前後から歴史が始まる。したがって、普段読む本には、1600年以前の出来事や人物が出てくることはめったになく、1400年代、1500年代の話というだけで、新鮮な気分になった。
ルネサンス史については、塩野七生の本を読んで得た程度の知識しかないが、それでも十分に楽しめた。