タレントデビュー必成の御利益も?多様な江戸東京の神様・仏様

個人の現世利益祈願に裏づけられる
長沢利明

江戸東京ブームに向けて

こうした一見の価値のある参詣スポットが東京都内には今でもたくさんあり、それらの多くは地下鉄やバスで気軽に巡ることができる範囲に散らばっている。大都市東京ならではの交通網の利便性の高さによってもそれらはささえられている。

 

そのことは江戸時代にあってもあまり変わりがなく、都市社会というものはそうした歴史的・社会的条件のもとで、巨大な民間信仰のパワーを生み出す母胎となっていた。民間信仰の創造力は、農村社会におけるそれの何倍ものスケールを持ちつつ、大都市中枢にあってこそ豊かな発展を見せるものといえるかも知れない。

このたび、講談社学術文庫として刊行された拙著『江戸東京の庶民信仰』は、世界最大級の大都市として成長を続けてきたこの江戸東京を例に取り、そこでの民間信仰・庶民信仰の実態をいくつかとらえ、筆者による調査成果をまとめてみたものだ。

来年は、この東京の街に再びオリンピックがやってくる。何度目かの江戸東京ブームの再来が、またあるかも知れない。これを機会に、この街に伝えられてきた民俗信仰の歴史というものにもう一度注目しつつ、それが見直され、光が当てられることがあってもよいだろう。本書がそのために少しでも、貢献できたとしたならば、まことにさいわいなことである。

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(ながさわ・としあき 法政大学・国士舘大学講師)