涙のかっぱえびせん

少女マンガのヒロイン気分でウキウキ子犬を拾ってきた翌日、私は泣く泣くその子を元の原っぱに捨てに行った。
緑色の原っぱに群れ咲く、真っ白なシロツメクサ。
季節は春だったのかもしれない。
「ここにいてね、バイバイだよ」
そんな言葉を理解できるわけもなく、子犬は無邪気に私の後を追ってくる。

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そこで、取り出したのが「かっぱえびせん」だ。
そう。この21世紀の現代でもおなじみのかっぱえびせんは、私の子供時代、すでに大人気のおやつだったのだ。
私は原っぱにとっておきのかっぱえびせんを撒き散らし、子犬が夢中でそれを食べている間に一目散に逃げた。

しばらくして、私がいないことに気付いた子犬の鳴き声が聞こえてきたけれど、必死で耳をふさいで、振り返らずに泣きながら逃げた……。

このお子さんは折原さんではありませんが、こんな広々としたところで折原さんは子犬と会いました 写真提供/折原みと

時は昭和40年代の終わり頃。わかりやすく言えば、『ちびまる子ちゃん』の舞台になっている時代のことだ。

あれから40年以上たった今でも、あの時のことを思い出すと泣けてくる。
原っぱに置き去りにしてしまった子犬は、誰かに拾ってもらえただろうか?
小3のあの日、私は現実の厳しさを痛感した。

子供って、無力だ。
親の保護下にある以上は、その決定には逆らえない。

だったら、どうしたらいいんだろう?

悔し涙にくれながら、子供なりに真剣に考えた。
そして私は、ひとつの答えを見つけたのだ。

そうだ! それなら早く大人になればいいんだ!!

大人になったら、自分で働いて、家を出て、親に頼らず自分の力で生きて行く!

そしたら、誰にもモンクを言わせず犬を飼うんだ

そんでもって、絶対絶対幸せにしてみせる!!

しょっぱい涙の味のかっぱえびせんを嚙みしめながら、まるちゃんみたいなオカッパ頭につりスカートの女の子は、固く心に誓ったのだった。
フワフワでコロコロのあったかい生命を守ってやれなかった悔しさと、子犬の信頼を裏切ってしまった胸の痛みは、強い自立心の源となった。

そして、今にして思えば、それが、夢と憧れの「犬ライフ」への、長い道のりの第一歩だったのだ。