旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、ブックディレクターの山口博之さんに選書してもらいました。
 

日常で最も宇宙に近づく場所

空飛ぶ飛行機から見える景色は、日常の中で最も非日常の景色であり、最も宇宙に近づいた景色でもある。ジェット機が飛ぶ高度10000m(10km)程度では、宇宙までまだ90kmもあるけれど、雲より高く空以外になにもない景色の先には宇宙がある。


SATELLITE
佐藤健寿著/朝日新聞出版(2015年)
人工衛星から撮影した超高解像度写真集。南国の島や砂漠、火山、計画都市や工業地帯など、世界120カ所以上を収録している。

『SATELLITE』は、宇宙側から我々を見ている人工衛星が写した“地球”を、写真家・佐藤健寿が「聚落」「構造」「産業」などの5項目で再構成した写真集だ。人類が知恵と技術と労働力によって作り上げた様々な人工物は、地上にいるうちは決してその全貌を見ることができない。地球を俯瞰するという特殊な視点でのみ見えてくる、整然とした人工空間の圧倒的な美しさと管理と支配の図。宇宙人が地球に降り立つ時、一体何を思うのだろうか。


LAND SPACE
瀧本幹也著/青幻舎(2013年)
ライフワークとして撮影した2つのシリーズから成る本作。新しいスペースシャトルのポートレートと地球の自然が記録されている。

一方で私たちが想像する他の惑星は、いつもどこか似ている。荒涼とした石と砂のような地表、ラギッドな岩山、乾いた風。瀧本幹也が撮った風景は、スペースシャトルの写真とともに見ると、途端に“惑星らしい”風景へと変化する。どこかにある地球の景色が、行ったことのない惑星の景色になる。
 


The Sky Book
Richard Misrach著/Arena Editions(2000年)
アメリカ西部の様々な場所で空、雲、星などを撮りためた写真集。巻末には撮影場所のほか、雲、星の語源等の説明テキストもあり。

『The Sky Book』は、空以外なにも映っていない光と色だけを写し撮った写真集だ。空がグラデーションになり、世界が光か闇かに飲み込まれていく日の出と日没の時間の美しさは、言葉にできない。飛行機から見える景色もそうだ。上を見ても、下を見ても、まっすぐ見ても、いつも見とれて言葉にならない。
 

PROFILE

山口博之 Hiroyuki Yamaguchi
ブックディレクター。旅の本屋BOOK246と選書集団BACHを経て、2016年に独立。ブランディングから企画、編集、執筆までを行う。

●情報は、2019年4月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Toru Oshima