中国動画ビジネスに「商機」を見出した、23歳起業家の目論見

「バブル」ではなく「メガトレンド」だ

スマホ普及で動画時代が到来――。ここ数年、そんな言葉を頻繁に耳にする。

確かにYouTubeを筆頭にInstagramやFacebookなど多くのSNSで動画コンテンツを目にする機会が増えた。数多の動画制作会社がある中で、100人以上の従業員を率いる23歳の北村功太氏が共同創業者兼COOを務める「バベル」が異色なのは、創業1年目から中国進出を決めていたことだ。スマホ時代、北村氏が見据える、「中国動画マーケット」の可能性とは。

動画メディアとしては「勝負」しない

動画バブルと言われるメディア業界で、1件の資金調達が注目を集めた。サイバーエージェントの藤田晋代表取締役を中心とした投資事業本部、通称「藤田ファンド」を中心とした3.4億円の第三者割当増資だ。

その出資を受けたのが動画メディアを手がける「バベル」。当社はDIY動画の「Yoitem」や玩具の紹介動画「Toycha」などの動画メディアを手がけている…ように見える。だが、北村氏は「僕たちは動画メディア単体でのマネタイズは考えていません。あくまでユーザーが最も見たいプラットフォームで、最も必要とされるコンテンツフォーマットを知るための“リサーチメディア”として割り切っています」と話す。

その言葉の通り、バベルの主軸は動画メディアの運営ではない。運営する動画ビジネスの知見を活かし、クライアントの動画広告プランニングを、国内はもちろん中国に対しても請け負っている。

 

バベルが特徴的なのは、動画制作にまつわる認知から効果測定までを“一気通貫”で担っている点だ。従来の動画制作会社では、クライアントからの「こんな新商品を作ったので、SNSやYouTube上で流す宣伝用の動画を作ってほしい」という依頼に対し、動画を忠実に作って納品するまでが仕事だ。

だがバベルは、動画の企画立案から携わり、動画の長さやどのような情報を盛り込むべきかといった実際の制作面を担う。さらには、自社動画メディア運営で得た独自データに基づき、どのようなメディアに出稿すべきかを提案。商品の購入につなげる最適化された動画広告マーケティングまで手がけている。つまり、動画制作だけでなく、プランニングから運用まで担うコンサルティングのような側面もあわせ持っている。

バベルが手がけた教育系玩具の動画がいい例だ。「おもちゃで遊ぶのは子供たちですが、実際に購入するのは大人ですよね。おもちゃを使って遊んでいる動画は、YouTubeなどの子どもにリーチできるチャンネルに出します。一方で、購入者である親御さんに向けては“教育に役立つ”とか“片付けが簡単で部屋がきれいに見える”といった観点を訴求すべく、ママ系インフルエンサーたちを起用したり、ママに強いメディアやSNSに掲載するなどして作り分けていく」のだという。

「ただし、ここまでやっても認知が獲得できたにとどまります。次の一手としては、これら動画に反応してくれた層に対し『いくらなのか』『どこで買うことができるのか』といった情報を盛り込んだ動画を出していき、Amazonなど購買サイトに促します。そこまで丁寧に作り分けなければ、購入には繋がりません」

動画メディアが乱立し、星の数ほどの動画広告がある中で、いかにして消費者の行動につながる動画広告を投下していくか。誰も知らない答えを北村氏たちは導こうとしている。

次の北村氏の言葉に「スマホ普及による動画時代」の本質がある。

「単に商品の動画広告を創るだけでは『テレビCMの移植』と変わりません。かといって廉価な動画を大量投入すればいいわけでもない。ユーザーの行動や視聴タイミング、プラットフォームによって、同じ商品でも動画の内容そのものや尺、打ち出すメッセージなどすべてが変わってきます」。バベルが目指すのはユーザーやプラットフォームに応じた「カスタマイズ動画」を手がける「ウェブ動画2.0」の世界だ。