ソニーや富士フィルムが標的に!物言う株主は「親子上場」企業を狙う

過渡期にある日本特有の企業文化
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

親子上場の利益相反

しかし、親子関係というのはいつも難しい。親は子がちゃんと育つかどうか心配で何かと口を挟みたくなるが、自立心の強い子は親の干渉を離れて自由に物事を自分で決めようとするから、内に引きつけておこうとする求心力と外に飛び出そうとする遠心力との間で常に緊張感がある。

Photo by iStock

企業の「親子」の間にも、それに似たバランスや緊張感がある。特に親会社とその子会社が揃って株式を公開する親子上場では「親子」の関係はさらに複雑なものとなる。めちゃくちゃ強引な例え方をすれば、親子上場というのは松田聖子と神田沙也加の紅白母娘共演とか、安藤サクラと奥田瑛二の朝ドラ父娘共演のようなものだろうか。一家にスターが二人いるようなものだ。

親子上場の利点としては、才能があるのにこれまでは有名な親の陰に隠れて正当に評価されてこなかった子の実力を知らしめることで、ファミリー全体の評価が上がるということがある。親会社の陰に隠れていた子会社の事業価値が株式公開によって顕在化され、事業グループの評価が全体的に高まるということだ。

 

一方、親子上場の問題は、親と子がライバルとなって投資家の資金やグループのリソースを奪いあう利益相反だ。投資をする側から見れば、親と子、どちらの「スター」を応援したらよいのか戸惑うことになる。また「一家」として資金調達しておきながら、その一員である「子」も新たに資金を調達するのは、投資家からの資金の二重取りだという批判もある。

特にガバナンスで問題となるのは、子会社に支配力を持つ親会社が、自分の都合の良いように子会社を動かして、子会社の少数株主に不利益を与えるという利益相反である。例えば親会社が子会社に市場価格よりも高値で親会社から材料を買わせ、本来子会社に流れるはずのキャッシュフローが親会社との取引で流出してしまう場合などがこれに相当する。この場合は、子スターの稼ぎを親が横取りするようなものだ。

2兆4000億円を調達し「平成のメガディール」となったソフトバンク(9434)のIPO(新規上場)から4ヶ月近くが経った。この間、親会社のソフトバンクグループ(9984、以後 ソフトバンクG)株は自社株買いなどが好感されて3割も高騰したが、子会社のソフトバンク株の方は公募価格の1500円をまだ一度も上回っていない。子会社株を買った多くの個人投資家からは深いため息が聞こえる。

ソフトバンクの上場では親会社のソフトバンクGが保有する子会社の株を放出する形で公開が行われたが、調達した資金のうち6000億円が、子会社の成長投資ではなく「サプライズ自社株買い」による親会社の投資家還元に充てられた。

ソフトバンクGからすれば、もともと保有していた子会社株を売ったわけだし、これまで自社に100%入っていた携帯事業のキャッシュフローを今後は外部投資家と分け合うことになるから、親会社の株主還元でバランスが取れると考えたのかもしれない。

しかし、予想配当利回り5%以上という高率にも関わらず携帯子会社株が不振なところを見ると、市場がソフトバンクGのソフトバンクに対する支配を嫌気しているのは明らかだ。ソフトバンクの85%という高い配当性向(当期利益から配当支払いに回される比率)も、どうも親会社に貢ぐために課せられたものと見なされてしまっているようだ。