ソニーや富士フィルムが標的に!物言う株主は「親子上場」企業を狙う

過渡期にある日本特有の企業文化
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

アクティビストに特に狙われるのは、親会社が保有する子会社の資産価値が、親会社の市場評価を上回る場合だ。

「解散価値(会社の保有資産を市場で売却した時の価値)」という考え方だが、例えば1000円に相当する子会社株を持っている企業が500円で取引されているならば、この会社を存続させておくより解散して子会社株を売却して現金化した方が価値が倍になる。

多くの場合、こういう会社は経営者の能力や企業ガバナンスの体質が市場から嫌われて、子会社の保有価値を差し引いた本業の価値が「マイナス」評価になっている。こういう企業は経営が変わると株価が急上昇するポテンシャルが高く、「物言う株主」の揺さぶりの対象になりやすいのだ。

香港のヘッジファンドから要求書を突きつけられたパソナグループ(2168)がその典型だ。パソナが保有するベネフィットワン(2412、パソナが53%程度保有)の価値は4月9日現在1870億円程度あり、700億円弱のパソナの時価総額を大きく上回っている。

 

なぜ多い?日本の親子上場

日本には親子上場企業が多い。東京証券取引所の2017年版「東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書」によると、東証上場会社の9%にあたる324社が親子上場となっている。

もともと日本では、親会社が子会社を上場企業まで育て上げ、そのままファミリーの一員にしておく「インキュベーション型」の親子上場が多い。

東京証券取引所 Photo by GettyImages

NTTのドコモも、ソフトバンクのヤフーも、キリンの協和発酵キリンも、もともとグループ内で育った企業がそのままファミリーに留まったケースだ。トヨタに至っては、デンソーやアイシン、豊田自動織機など持分法適用(保有率2割以上5割以下)子会社も含めると、上場している子会社の数は1ダースを超える。

ヨチヨチ歩きの中小新興企業にとっては、「親の七光り」を使った方が断然有利だ。

中小企業が看板なしで資金調達しようとすると、社債でも株でもリスクが高いと見られて高い利子やリターンを要求される。でも誰でも知っている大企業の看板があれば貸し手も安心するので、「資本コスト」(企業が資金を調達する際にかかるコスト)を下げることができるのだ。また親会社のブランドやコネがあれば仕事も取りやすいし、親会社が培ってきた経験や技術や人材も活用できる。

米国のベンチャーキャピタルのような外部資金調達の土壌が無かった日本では、親子上場が新興企業育成の役割を果たしてきた側面があるのだ。

ただし、欧米では大きくなった子会社を将来のスピンオフ(完全分離)の前段階として上場させることはあっても、子会社が上場した後も親会社がいつまでも支配的な保有を続けるケースは珍しい。

一方で日本では、子会社が公開企業となっても5割以上を保有して支配権を持ち続ける親会社も目立つ。ソフトバンクグループは最近公開したソフトバンクの66%を、NTTはドコモの64%、イオンはイオンモールの55%、キリンは協和発酵の53%、三菱商事はローソンの50%を保有する。

子供が一人前になっても家から出ずに同じ屋根の下に住み続けるという企業が日本に多いのは、欧米に比べて家族や縦割り型の共同体意識が強い文化も影響しているのだろうか。