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ソニーや富士フィルムが標的に!物言う株主は「親子上場」企業を狙う

過渡期にある日本特有の企業文化
4月9日、ソニー株は急反発した。「物言う株主」として知られる米「サード・ポイント」が同社の株を取得したと報じられたのだ。ソニーはなぜ標的になったのか? その背景には「親子上場」の問題もある。
米国の投資運用会社で働いた経験があり、『マネーの代理人たち』の著書もある小出・フィッシャー・美奈氏が、日本特有の「親子上場」という企業文化が生まれた経緯と今後の行く末を解説。

ソニーに再び「物言う株主」の出現

春が来て暖かくなると自然界の動きも活発になるが、「ハゲタカ」などと呼ばれるファンドも動き始めたようだ。

今月9日、ロイターの報道を受け、ソニーの株は9%も跳ね上がった。アクティビスト(=物言う株主)として知られる米ヘッジファンド「サード・ポイント」が再びソニー株を買い増しているというのだ。

 

サード・ポイントは2013年にソニー株を7%程度まで買い進め、映像と音楽を含む「エンターテイメント事業」の切り離しを求めて経営陣に意見書を送りつけたことで知られる。今回は映画事業をアマゾンやネットフリックスなどの第三者に売却することなどが提案に含まれるのではないかと報じられた。

サード・ポイントを率いるダン・ローブ氏は、とりわけ辛辣な公開書簡を送ることで知られる。オークション大手の経営陣入れ替えを求めた時には「サザビーズは大幅な修復が必要な状態になっている巨匠の名画のようだ」と皮肉を言い、スター・ガスというエネルギー会社の最高経営責任者(CEO)の辞任を求めた時には、このCEOを「全米最悪の能無し経営者」と容赦なくこき下ろしている。

ダン・ローブ氏 Photo by GettyImages

これらに比べれば、2013年のソニーに対する発言は、比較的大人しかった。莫大な予算を投じた映画が次々と不振に終わった後で平井社長が「エンターテイメント事業は心配ない」と発言したことに嫌味を言ったくらいだ。さて、今回はどうだろう。

アクティビストに狙われる?親子上場

映画事業と並んでサード・ポイントから過去に問題にされたのが、ソニーの親子上場だ。

ソニー(証券コード6758)は、上場会社である保険会社、ソニー・ファイナンシャルホールディングス(8729)の65%を保有する。

半導体やゲーム事業の収益性が大きく回復した今でこそ親会社の営業利益に占める比率は2割程度(昨年度決算)まで低下しているが、エレクトロニクス事業の構造改革で大赤字が続いた2015年頃までは、ソニー・ファイナンシャルがソニーの利益をほぼ1社で稼ぎ出していたこともあった。

2018年からSONY社長を務める吉田憲一郎氏 Photo by GettyImages

ソニー側の説明では、ソニーのブランドが保険契約の獲得など、ソニー・ファイナンシャルの事業成長に大いに役立ってきたのだから、それが「シナジー」だという。

ただ、ソニーのコア事業であるエレクトロニクスや半導体、ゲームとソニー・ファイナンシャルの保険事業では、どう見ても業態が違いすぎる。これまでもソニーの投資家からは、シナジーのないノン・コア事業ならば売却してはどうかという声も多く聞かれてきた。

親子上場する企業は、これまでも度々ヘッジファンドなどアクティビスト(物言う株主)の標的となっている。

例えば昨年、富士フィルムホールディングス(4901)が米ゼロックス(XRX)を買収しようとしたところ、80年代からアクティビストとして鳴らす大御所、カール・アイカーン氏が米ゼロックス側の議決権を獲得して、買収契約を一方的に破棄。これに対して富士フィルム側が損害賠償を求めて法廷に提訴した。一年近くが経過した今も、事態は膠着状態だ。