10連休におすすめ「御岳山」を歩く~東京にもこれだけの自然がある 

近場で過ごしたいという方に
福嶋 司

御岳山では本殿の裏にオオカミを祀る大口真神社がある。なぜオオカミが祀られているのか。社伝によれば、その昔、日本武尊が東征の折に、この地付近で道に迷った。そこに白い狼(山犬)が現れて道案内をし、ここに宿陣したという。出立の時、オオカミもついていくことを望んだが、「お前はここに残り人びとの生活を守るように」と日本武尊が命じ、オオカミもそれに従った。以来、人びとを火事や盗難などから護りつづけているという。

明治維新以前は「神狗供所」と言われ、「おいぬさま」と呼んでお供えをするところであった。御岳山では神狼の御影を印した護符を配布し、今でも、武蔵野に生活する人びとは戸口、倉前、田畑のなかまで貼りたてて火難・盗難よけのお守りにしている。

ロックガーデンへの道

本殿前の石段を下り、細い道を右折して少し進むと「長尾平」に着く。

春先には、今では貴重になったイカリソウの赤紫の花もみられる。また、5月頃にこの長尾平に立って向かいの鍋割山(標高1084メートル)をみると、尾根部にツガの深緑、斜面にブナの鮮やかな黄緑の樹冠がとても美しい。長尾平の先端部にはモミやツガが生育しており、両種を直接手の届くところで観察できる。

イカリソウ

長尾平からさらに細い道を谷に向かって進むと、渓谷沿いのロックガーデンと呼ばれる道になる。植物の構成は一変し、カツラ、サワグルミ、チドリノキ、ジュウモンジシダ、リョウメンシダなどからなる渓畔林に移り変わる。

新緑の御岳山

岩石が積み重なった谷を進むと、「綾広の滝」の付近には樹高38メートル、幹周囲4メートルといわれるカツラの大木が立つ。これは「お浜の桂」と名付けられており、元禄時代から生育しているという。またこの道は夏には涼しく、涼風が心地よい。沢沿いの岩陰では一枚の大きな葉を持ち、紫の花を咲かせるイワタバコも見ることができる。

お浜の桂

御岳山は高尾山よりもさらに高い位置にある。このことから高尾山では見られなかった、関東地方のまた別の自然が観察される。新緑の美しい五月の連休前後にはぜひ訪れたい場所であるし、また猛暑を避けて散策するのにも格好の場所である。