10連休におすすめ「御岳山」を歩く~東京にもこれだけの自然がある 

近場で過ごしたいという方に
福嶋 司

この場所には春にはカタクリも咲く。斜面を登りきった尾根部には、直径1・4メートルを超えるモミや、アカマツが多く見られ、それらの下にはバイカツツジ、アセビ、ミツバツツジ、コアジサイなど尾根に生育する低木がめだつ。初夏にはアジサイでありながらも装飾花をもたないコアジサイが薄紫色の可憐で清楚な花を咲かせる。私はこの花が大好きである。

コアジサイ

壮観な神代ケヤキ

参道に出て少し歩くと参拝者のための「宿坊」がめだつ。途中には古い入母屋造りの茅葺き屋根の家が残る。さらに進むと坂になり大きなケヤキが出現する。このケヤキは「神代ケヤキ」と呼ばれ、国指定の天然記念物になっている。幹周りが8・2メートルといわれる大木で幹のなかは空洞になっているが、樹勢はよい。別名「千年ケヤキ」と呼ばれるが、樹齢1000年はともかく、かなりの樹齢であることはたしかである。

神代ケヤキ

それを過ぎると土産物店、食事の店が並ぶ。山上に集落ができたのは近世以降で、江戸末期の文化7年(1810)頃には山上に6軒程度の茶店があったという。土産物商店街からの参道は「霧の御坂」とよばれ、かつては老杉に覆われた昼なお暗い坂道だったという。しかし、昭和41年(1966)の台風で、スギ老齢木の多くが倒れ、景色は一変した。明るい空間になっているが、残ったスギは時代を感じさせる力強さがあり、壮大である。

参道沿いには信徒講中の建立した登山記念碑が林立する。たいていの人は男坂と言われる急な石段の坂を登るが、それを避けて北の女坂と呼ばれる道を進むと、北側の一帯には絶景が広がる。向かいの斜面には針葉樹が多く、この地域の自然を代表するモミやツガの大木がめだつ。これらは太平洋側地域の標高800~1000メートルを中心に分布する針葉樹であり、第三紀の古い時代、中国大陸南部から渡ってきた祖先系から進化したものである。

モミとツガの区別点はつぎのようである。

モミは葉の先が二裂しており、その先が針のようになっている。樹皮は黄色がかった灰色で、皮目と呼ばれるいぼ状の突起がある。

モミの葉

一方、ツガの葉はモミよりも短く、先は若干、凹入程度に窪むが、先は針にはならない。樹皮は赤みを帯びた褐色で剥がれる。

ツガの葉

なお、亜高山に分布するコメツガ、オオシラビソ、トウヒなどとは同じ仲間(科)であっても寒冷期に北方から南下したグループの種であり、遺伝的な起源を異にするグループである。

山頂に祀られた武蔵御嶽神社

御岳山山頂(標高929メートル)には武蔵御嶽神社がある。伝承では、この神社は奈良時代の僧・行基が堂を建て、蔵王権現を祀ったといわれる。この神社は古くから農耕神、火難・盗難よけの神として広く関東一円の信徒の信仰の対象となった。荘厳な本殿裏の玉垣内には桃山建築の遺構を示す東京都文化財の旧本殿がある。本殿はもともと南向き(鎌倉の方向か?)だったが、慶長10年(1605)の再建に当たり、江戸城鎮護の祈願所として東向きに改められたという。