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パラスポーツには、超高齢社会日本に必要なヒントが豊富にあった

2020年の東京大会に向けて考えたい

来年は東京でパラリンピックが開催される

東京の街中を見渡してみると、いよいよ2020年のオリンピック・パラリンピックが近づいてきたからなのか、大会に向けた様々な動きが本格化してきたように感じる。ふと気づけば掲示板にポスターが貼られていたり、タクシーのナンバープレートが大会仕様になっていたりと、直接大会に関係していない人たちも少しずつ2020年を意識し始めているようだ。

とはいえ、意識されるのは主にオリンピックで、パラリンピックへの関心はまだまだ低い。僕は長らく放送局でパラリンピックに関する番組の制作をしてきたし、昨年『伴走者』という小説を上梓したこともあって、パラスポーツの現場には取材の一環としてそれなりに出向いてきたし、選手や関係者ともある程度の付き合いがあるから、もう少しだけパラスポーツへの注目が高まって欲しいと願っている。

現場に足を運んで僕が感じているのは、日本のモノ作りが本気を出せば、パラスポーツを起点にした新しい市場を作れるのではないだろうかということだ。一見、何の関係もないように思われるかも知れないが、実はパラスポーツにモノ作りは欠かせない。

もうすっかり過去の話になってしまうが、昨年3月に韓国の平昌(ピョンチャン)で開催された冬季パラリンピックはメディアもそれなりの大きさで取り上げていたから、ご覧になった方は多いだろうし、選手たちが様々な専用の道具を使っていたことも記憶に残っているかもしれない。そう、これは道具の話である。

 

先端にスキーのついたアウトリガーと呼ばれるストック。椅子に座ってゲレンデを滑降するチェアスキー。パックを打つだけでなくソリを漕ぐのにも使われるアイスホッケーのスティック。膝関節と足関節が連動して動くスノーボード専用の義足など、どれもふだん僕たちがあまり目にすることのないものだ。もちろん冬季だけではなく、来年やってくる夏季大会でも競技用の義足や車椅子をはじめとする、いろいろな道具が使われている。

スポーツに専用の道具が使われるのは当たり前の話だし、一流の選手が自分専用の用具を誂えるのは別に珍しい話でもないけれど、パラスポーツに使われる道具は、単純に競技のためだけでなく、選手の日常的な動作を支えたり、欠損した肉体や筋力を補う補助具や装具としての役割も担っているという点が、他のスポーツの道具とは違っている。

そもそも、ひとりひとり肉体の形や状態がまるで異なるのがパラスポーツの面白いところで、同じ競技の選手でも、使っている道具はそれぞれの状況に合わせて細かく異なっているのだ。

車椅子バスケットボールのように選手全員が車椅子に乗って戦う競技でさえ、腹筋が使える選手と使えない選手では背もたれの有無が変わるし、両足を動かせる選手、まったく動せない選手、片足切断の選手、両足とも無い選手では足置きの作りも違ってくる。

もちろんトップレベルの選手でも、すべての道具が体に合わせてつくられているわけではない。パラスポーツを積極的に応援しているメーカーの中には、選手といっしょになって新しい道具をつくっているところもあるけれど、むしろ多くの選手は既製品をうまく組み合わせるなどの工夫をしているし、中には、自分でネジ一つ、布一枚を足したり引いたりして、ミリ単位、グラム単位での微調整を行なっている選手もいる。

いずれにしても、いかに自分の体にフィットさせるかを追求すれば、どうしても万人に使えるものではなく、自分にしか使うことのできない道具になっていく。障害者を取り巻く話題の中には、ユニバーサル・デザインだとかバリア・フリーなんて言葉がよく出てくるけれども、実は、パラスポーツに使われる道具は、あまりユニバーサル・デザインだとは言えないかもしれない。全員が同じように使いやすい道具を揃えるのではなく、それぞれの選手に合わせてベストな道具を用意しなければ、なかなか世界で勝つことはできないのだ。