2019.04.18

米軍空母艦載機の離着陸訓練候補地で起こった「知られざる最終戦争」

日本政府も焦りを感じる馬毛島問題とは
伊藤 博敏 プロフィール

解決の道が見えない…

勲氏の強行姿勢に業を煮やした防衛省は、ある策謀をめぐらせた。

「防衛省に“扇動”させられる形で、馬毛島に抵当権を打っている業者が、昨年6月と8月、タストン・エアポートに第三者破産をかけたんです。立石氏は、債権者に、『代表を退き、国との交渉を一任する』という委任状を提出した。それで、当面の債権債務は片付き、国との交渉が再スタートした」(勲氏の知人)

そこに登場したのが、一任された業者と親しい加藤総務会長で、その後、防衛省に任せていたのではラチがあかないと、官邸が乗りだし、菅義偉官房長官の指示で、「国家的観点からの解決」が図られるようになる。それが、鑑定価格の2・5倍超の160億円での仮契約だった。

誰もが、これで決着と思った。

「老いの一徹の勲氏が相手ではやはりダメだった。若いけど、薫氏も頑張った。400億円という言い値が法外で、整地を終え、ラフとはいえ滑走路ができており、その分を加味して100億円にいくら上乗せできるか、という交渉だった。最初は140億円がギリギリ。それが160億円なんで、『さすが菅裁定』という声があがった」(防衛省関係者)

 

だが、勲氏は納得していなかった。タストン・エアポートはあくまで立石建設グループであり、支配権は勲氏が持つ。その職権で今年2月、株主総会を開き、薫氏を切った。「親子の情」よりカネを優先させた。

ただ、復帰したところで、馬毛島を売却しなければ、立石建設グループ全体が立ち行かないのは同じである。資金繰りの苦しさは相変わらずで、数千万、数億円の手形を、「馬毛島が売れれば」と、債権者に泣きついてジャンプしてもらう状況が続いている。

160億円でも、「モリカケ騒動」の余韻が残るだけに、「地元で反対運動が起きるなど、民意に反する移転を、しかも高値買収で行なうとはどういうことか」と、共産党の仁比聡平議員が3月の予算委員会で質すなど、国会で問題になっており、これ以上の“上乗せ”は、いかに「特別枠」でも難しい。

四面楚歌というしかない状況だが、勲氏はこれまで、何度か電話で対応してもらった時と同じく、筆者に「見守ってくれ」と繰り返した。

「社長に復帰して、(防衛省に)すぐに挨拶に行こうと思ったけど、なかなか対応してくれない。来週(4月22日の週)には行くつもりだけど、価格ウンヌンの前に、もう一度、私が話をしたいと思っている。決まれば連絡するので、しばらく待って欲しい」

米との公約をどう実現すればいいのか、と国は焦り、立石建設にも余裕はない。だが、脅威の粘りを見せる老経営者の前では、今のところ解決の道は見えず、誰もが嘆息している。

関連記事