米軍空母艦載機の離着陸訓練候補地で起こった「知られざる最終戦争」

日本政府も焦りを感じる馬毛島問題とは

400億円と45億円では…

米軍空母艦載機の離着陸訓練用地となることが内定していた鹿児島県の馬毛島で、大ドンデン返しが起き、年度内に「国が160億円で買収する」という仮契約が反故にされ、地権者と再交渉することになった。

種子島の西方12キロの南シナ海に浮かぶ馬毛島を所有するのはタストン・エアポートという都内世田谷区の会社である。代表を務めるのは立石勲氏(86)。鹿児島県出身で、水産高校を卒業後、船乗りから身を起こして建設設計分野に進み、砂利採取、再生砕石、産業廃棄物処理と幅広く事業展開、一代で立石建設グループを築き上げた。

それだけに、しぶとさは超一級。勲氏は後述する理由で、いったん、息子の薫氏に代表権を譲り、国との交渉を委ねていた。まだ20代の薫氏は、加藤勝信・自民党総務会長が乗り出すという「国の圧力」に呑まれたように、今年1月、仮契約を結んだ。

 

勲氏は、それがどうしても受け入れられなかった。そこで親子喧嘩になるのを承知で、息子の薫代表を、2月19日に解任。薫氏は「正当な手続きを経ていない」として仮処分を申し立てていたが、東京地裁は、4月8日、却下。勲氏が代表に復帰した。

馬毛島を買収して空母艦載機の離着陸訓練に利用するのは、「日本は在日米軍の駐留費をもっと負担すべき」と、主張するトランプ大統領への「誠意ある回答」だった。無人の馬毛島は、「タッチ&ゴー」を繰り返し、大騒音が発生する離着陸訓練には最適。今は、硫黄島で訓練を行なっているだけに、燃料も時間も大幅に削減できる。

そこで、防衛省は勲氏と買収交渉に入るのだが、価格差が大き過ぎた。国の鑑定価格は約45億円。それに対して勲氏が、独自鑑定で主張したのは約400億円だった。

勲氏は、95年に「旧平和相銀の負の遺産」と呼ばれた馬毛島を4億円で購入。「民間の国際貨物空港にする」という夢へ向け、私財約150億円を投入、整地し滑走路を敷設、準備を整えていった。が、それが立石建設グループを追い詰め、資金繰りを悪化させた。

都内や川崎などに所有する資産には限度枠いっぱいの抵当権が設定され、金融機関は融資に応じなくなり、短期、高利の金融業者からの借り入れに頼るようになった。その分、トラブルも発生する。

私は、買収交渉が本格化した2年前、本サイトに「トランプに“誠意”を見せたい防衛省が急ぐ『基地の島』買収の困難」(17年1月26日配信)と題して、都内町田市に住む元暴力団組長とのこじれた関係を紹介した。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50809

元組長は、5億円の根抵当権を馬毛島に設定。それは裁判で抹消されたのだが、勲氏がここから3億5000万円の資金を借りていたのは事実である。そのために4億円の手形が降り出され、それが恐喝によるものだとして元組長は16年11月、逮捕された。

この件だけではない。馬毛島には、債権債務関係が定かではない抵当権が、幾つも残されており、それは勲氏の「馬毛島が高値売却できれば返せるから」という言葉に乗って融資をした業者らの痕跡である。