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「僕がDMMに会社を売ったワケ」インフラトップ大島CEOの勝算

グループインの影響とメリット

かつてスタートアップの出口戦略といえば、「IPO」が一般的だった。ところが最近はヤフーによるdely買収、ユナイテッドのトライフォート買収など、「M&A」による大手企業へのグループ入りという選択が目立っている。

苦労して育て上げた会社を売却することに抵抗はないのか? グループインで得られるメリットとは? 昨年11月にDMM.comに買収されたインフラトップ代表取締役CEOの大島氏に、率直な疑問をぶつけた。

取材・文/黒川なお、撮影/白井智

IPOをするメリットが薄れている

「僕が経営者になると決めたのは、小学校5、6年生のころです。両親は一般的なサラリーマンだったし、起業家の親戚がいたわけでもありません。でも、僕にとってのヒーローは起業家でした。1人で会社を立ち上げて、腕っぷし一つで世の中の課題を解決していく、社会にどんどん影響を与えていく。そういう姿がすごくかっこよくて、憧れていました」

サッカー選手のような爽やかな笑顔でこう話すのは、株式会社インフラトップの創業者で、代表取締役CEOを務める大島礼頌(あやのぶ)さんだ。

ITバブルだった2001年頃、まだ少年だった大島さんの趣味はネットサーフィン。起業家の記事を読むのがとにかく好きで、中でもサイバーエージェントの藤田晋氏の影響をかなり受けたという。
*以下、青字の発言は大島さんによるもの

インフラトップといえば、慢性的なエンジニア不足を解消するために生まれた「WEBCAMP(現DMM WEBCAMP)」でこれまで順調に業績を伸ばしてきた。未経験者をエンジニアに養成し、就職や転職を支援するサービスだ。

ネットサーフィンくらいしかしたことのない未経験者が、3か月間でプロのエンジニアになれる。こうした質の高いサービス内容で、コースの卒業生の転職成功率は驚異の98%を誇る。同業他社の転職成功率は5割から6割くらいが相場というから、その圧倒的な数字には目を見張る。

 

インフラトップは昨年2018年11月22日、DMM.comに買収(M&A)されて話題になった。しかも、「グループインしてくれないか」というオファーが大手人材会社など4社からある中で、5社目として後から名乗りを上げたのがDMM.comだった。

「WEBCAMPは、その頃プロダクトのクオリティーがとても高まっていました。転職成功率からも分かるように、競争優位性もあり、優秀なエンジニアをどんどん輩出するためにも増資をして一気にサービスを広げていきたいと思っていたタイミングでした」

スタートアップが大手企業のグループ傘下に入る流れは、今増えている。ただ、これまでならIPO(新規株式公開)というのも大きな選択肢の一つだったのではないか。なぜ、大島さんは大手グループへの参加を決めたのだろう。

IPOを一番したがるのは、投資家です。投資家が得られる利益であるキャピタルゲインが大きいですから。起業家にとってIPOをするメリットは、社会的な信頼を得る、マーケットから資金調達ができるという2点です。けれどもこの2つは、大手グループの傘下に入れば両方手に入るわけです」

起業家にとって、IPOをするメリットが薄れているようだ。

もし上場すれば、3か月に一度業績をすべて公開する必要があります。その維持コストは大きいし、競合他社に情報をすべて見られてしまう。それにIPOで株を売ると、純粋に投資家が心配して会社の株価が下がるリスクが大きいんです。会社の価値が上がるなら、株を売らずにそのまま持っていればいいのに、という考え方ですね。株価が下がると、株は当然売りづらくなります。だったらわざわざ上場しなくてもいいのでは」

大島さんを含めて、そう考える起業家が増えている。