宇宙の始まりを目指して「超新星」を追う

宇宙の始まりを観測と計算で導き出す
サイエンスリポート プロフィール
吉田教授が指さしている顔のような画像の、端に見える円弧状のものが「歪み」の一例。
強い重力が直線に進むはずの光を曲げ、遠い銀河が曲がっているように観察される

宇宙の大規模構造については、1990年代後半頃から世界的に研究が進展しているが、「重力だけを考慮した計算からダークマターの分布を見ていくことでも、宇宙についての理論がだんだん洗練されていく」と吉田教授は言う。

「ごく微細な差を検出し、宇宙観測から得た分布と一致するためにはダークマターにどんな性質が必要なのか、物質の密度はどのくらいなのかなどを導くことで、理論やモデルを判定します。

しかし物質分布を導くというのは、出てきた結果から原因を探るというすごく難しい問題なので、ここでも統計数理研究所の知識を結集しているところです」

宇宙の始まりはコンピュータが教えてくれる

吉田教授はこの観測・解析と並行して、宇宙の始まりから星や銀河がどのように生まれてきたのかを再現するコンピュータ・シミュレーションに取り組んでいる。

「宇宙は本当の分布を教えてくれないので、われわれは観測から最も確からしい答えを出します。一方シミュレーションは、コンピュータの中に正確な物質分布を作り出すことができる」

理論に基づきコンピュータでシミュレーションをすることは、解析方法を検証し、その精度を上げることにもつながる。

「宇宙全体の進化や、宇宙全体の構成物が分かってくるのがゴールですね。そこのためには人工知能も使うし、コンピュータ・シミュレーションも使います」

吉田直紀教授。東京大学本郷キャンパスにある研究室にて

考えていくための手がかりとして「宇宙では、この地球とは全然違うことが起きているんだと言ったら何も先に進まない」と吉田教授は言う。

「むしろ考えの拠りどころは地球上にあって、身の回りで確かめられたことを使って宇宙を理解できるかどうかですね。今、私たちが知っていることを総動員しても理解できない場合は、『何か足りないのか?』『何かまだ知らない現象が起こっているのか?』と推測できる。どう考えても新しい要素を足さざるを得ないというところまで来て、初めて発見につながります」

答えてくれた人
吉田直紀教授(東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構)

専門は宇宙論・宇宙物理学。宇宙のダークマターとブラックホールの謎に迫るべく研究を行う。1996年、東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、理学博士(ミュンヘン大学)。米国ハーバード大学天文学科、名古屋大学を経て、2012年より東京大学教授、2014年よりカブリ数物連携宇宙研究機構 特任教授(兼任)。
答えてくれた人
池田思朗教授、森井幹雄特任助教(統計数理研究所)

池田思朗教授は1996年、東京大学博士課程修了、博士(工学)。統計的多変量解析手法の1つである「独立成分分析」を基にした音信号の分離や、雑音の多い計測データ解析などにむけた幅広い信号処理、解析手法の開発に取り組む。推定対象の信号に零が多いという仮定を用いる疎性モデリングにより、天文や物理計測の改善法などを手がける。森井幹雄特任助教の専門は観測天文学。

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