カラオ洞窟 Photo by iStock

フィリピンで発見! 「新種の人類」は「第5の原人」なのか?

あまりに奇妙な「ルソン原人」の正体
2019年4月10日付けの英誌「ネイチャー」に掲載された、フィリピンのルソン島から新種の人類が発見されたとのニュースは、驚きとともに世界をかけめぐった。

「ホモ・ルゾネンシス」と名づけられたこの奇妙な人類は、いったい何者なのか? それははたして「アジア第5の原人」なのか?

この論文を査読し、発表前に実物化石も見ていた進化人類学者の海部陽介氏に、現時点でわかっていることと、わかっていないことをまとめていただいた。

大発見の経緯(塗り替えられた解釈)

フィリピン大学の考古学者アルマンド・ミハレス博士(論文の第2著者)が、フィリピンのルソン島北部にあるカラオ洞窟(図1~4)で発掘した人類の足の指の骨を、「6万7000年前頃の人骨でおそらくホモ・サピエンス」と報告したのは、2010年のことだった。

カラオ洞窟図1 カラオ洞窟付近の風景。洞窟は正面の丘に開口している
カラオ洞窟図2 カラオ洞窟の入り口
カラオ洞窟図3 人骨化石が発見された発掘ピット
カラオ洞窟図4 カラオ洞窟の奥から。内部はキリスト教の礼拝場になっている

そうであれば、アジアにおけるホモ・サピエンスの出現が、従来の想定より2万年近くも古くなることになり、それはそれで大事な発見といえた。

しかし私は当初から、その報告に疑問を抱いていた。

「年代が正しいとしても、この足指はあまりに小さい。しかし人類であることはどうやら間違いないので、それはサピエンスではない別の矮小化した人類のものではないか?」と。

その当時、私はインドネシアの島で発見された身長1メートルのホモ・フロレシエンシス(フローレス原人)を研究していたため、自然とそのような発想になったのだ。

私は「カラオの指はおそらくホモ・サピエンスではなく、したがってホモ・サピエンスのアジア進出の議論に引用すべきではない」という私見を、2011年の国際会議の席上で述べた。

今回の「ネイチャー」への論文掲載が決まったあとの2019年2月に、私はフィリピン大学にあるマンディ(ミハレス博士のニックネーム)の研究室を訪問し、そこで新発見の歯と指、そして子供の大腿骨の化石を見せてもらった(図5)。

海部陽介図5 化石を手にするミハレス博士(左)と筆者(右)

彼は8年前の私の発言をよく覚えていた。そこで彼に、

「ほら見たことか! 君は間違っていた」

と言ったのだが、その言葉に対して彼が返してきたのは、満面の笑顔だった。

それもそのはずだろう。カラオの人骨は、彼のチームの当初想定よりもはるかにインパクトの大きい、大発見だったのだから。

マンディたちが見つけた骨は、かつてフィリピンの地に、奇妙な形態をした原始的な人類が暮らしていたことを示す、初めての証拠だった。