固定電話が「巨大なリスク」になっていることに気づいていますか

いまやデメリットのほうが上回る
加谷 珪一 プロフィール

従来型の固定電話に絞ると、2016年時点の加入者は2298万となっており、10年間で約半減した。この2298万人をめぐって、多くの勧誘電話がかけられ、場合によっては犯罪者も同じようなアプローチを行っている可能性が高い。

一人暮らしをしている高齢の親を持つ人の中には、リスク管理という観点から固定電話を廃止するケースも出てきているようだが、実際にはそう簡単にはいかない。高齢の日本人にその傾向が特に顕著なのだが、自身が使い慣れたツールを変えることに対して、過剰な抵抗感を示す人が少なくないのだ。

 

慣れたツールへの過剰なこだわり

かつて、日本の電話は品質が高いものの、料金も極めて高いという問題があり、通信サービスに対する規制緩和の動きが活発だった1990年代には、電話の過剰品質と料金の関係がよく議論された。料金が高いことの最大の理由は、NTTの市場独占にあったことは明らかだが、NTTの側にも多少の言い分があった。

日本の電話利用者は、ちょっとでもつながりにくかったり、呼び出し音の種類やタイミングが違ったりすると、途端にパニックを起こして電話が使えなくなってしまう。多大なコストをかけて常に同じ条件で通話できるよう品質を管理しておかないとクレームが寄せられるというのが現実であった(だからといって独占が許容されるわけではないが)。

諸外国では、電話会社がオフィス内のビジネスホンまで手がけるケースは少なく、別の事業者がオフィス内の電話を請け負うことも多いが、日本ではこの分野もNTTとその協力企業が圧倒的な立場である。

〔PHOTO〕iStock

外資系を含め多くの企業がビジネスホンに参入したが、使い勝手が違うと利用者が拒絶反応を起こすので、一部の企業を除いて、あまり顧客を獲得できなかった(ちなみに誰かが代表電話を取り、回線を保留にして、通話相手に切り替えるというラインキー方式は諸外国ではあまり見られない)。

ビジネスパーソンでもこのような状況なので、ましてや現役を引退した高齢者の場合、使い慣れた固定電話の廃止には頑強に抵抗する可能性が高い。

従来型固定電話の加入者数は今後、さらに減少していく可能性が高いが、この残り少ないターゲットの獲得を目指して、さらにしつこい電話勧誘が行われる可能性は十分にある。電話勧誘とは直接関係しないが、日本郵便は今年の4月から80歳以上の人に対しては保険の勧誘を行わない方針を固めたと報道されている。

コンプライアンスを重視する企業は、過剰なセールスを自粛する傾向にあるので、固定電話に対してはさらに過激なセールスが集中するかもしれない。