私大入試の難化の一因…?指定校推薦の「語られざる問題」

年々増えているようですが…
田中 圭太郎 プロフィール

指定校推薦枠を拡大する大学

まず、入試における「推薦」の割合を見ていこう。

私立大学全体では、一般入試の合格者は入学者全体の半数にも満たない。文部科学省の「平成30年度国公私立大学入学者選抜実施状況」によると、昨年は私立大学入学者のうち、一般入試を利用した人の割合が47%。つまり、入学者の5割超は推薦入試やAO入試で合格しているのだ。

推薦入試には、指定校推薦、公募推薦、スポーツ推薦、付属高校からの内部進学など、さまざまな形式があるが、こうした学校ごとの推薦が全体の4割、残り1割強がAO入試による合格者。AO入試は書類選考のほか、面接や小論文の試験のみで、基本的に学力試験を課さない。

このなかで最も古い推薦方式のひとつが「指定校推薦」だ。改めて述べるまでもないだろうが、大学が指定した特定の高校のみを対象とした推薦入試で、主に私立大学で実施されている。条件を満たしていれば誰でも出願できる公募推薦と違い、受験できるのは高校が選んだ生徒だけだ。

実は、指定校推薦の枠を各大学がどれくらい出しているのかは、ほとんど明らかにされていない。入学者全体のうち指定校推薦者が占める人数は、中央公論新社から毎年出版される『大学の実力』(読売新聞教育ネットワーク事務局)に独自調査の数字が掲載されているが、これはあくまで「指定校推薦枠を使った入学者の数」だ。実際はそれ以上に「使われていない推薦枠」が全国の高校にあると考えられるが、大学がその数を非公表にしているため、実態がわからないのだ。

しかし、繰り返しになるが、指定校推薦の存在感は年々増している。たとえば、今年の入試では、早稲田大学の教育学部がこれまで約50人を募集していた自己推薦入試を廃止し、指定校推薦を約190人募集したことが話題になった。同学部の定員は変わらないので、指定校推薦の枠が広がったことにより、一般入試で合格する人の枠がさらに減った形だ。

昨年の入試結果が掲載された、前述の『大学の実力2019』を見ると、早稲田や慶應をはじめとする有名大学では、学部によっては200人以上が指定校推薦で合格している。他の大学では、入学者の半分以上が指定校推薦という学部もある。

 

「指定校推薦は卑怯」と言われた時代

指定校推薦入試を、どの大学が、いつ頃始めたのかは定かではない。早稲田、慶應、上智や、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)などの難関大学では、かなり以前から出していたとみられる。

指定校推薦は、学部ごとに判断して枠を出す。その数は1学部につき、1つの高校に1枠、が基本だ。A大学のB学部が指定校推薦枠を50とした場合、50の高校から一人ずつ学生を採ることになる。

大学通信の安田常務によると、当初は全国から優秀な学生を確保する目的で始まったと考えられるという。

「毎年、その大学に複数の合格者を輩出する高校に枠を出すことで、その高校の優秀な学生に推薦で入学してもらおうという考え方で始まったのではないでしょうか。毎年入学者を5人以上出している高校に1枠を出す、もしくは毎年入学者を出している地方の高校に1枠出すなど、その基準はまちまちなようですが、優秀な高校から一人でも多くの学生に来てもらうための施策だったと考えられます」

指定校推薦は一定程度の割合で存在していたが、一時は否定的な風潮もあった。1980年代の中頃、安田常務は、当時の早稲田大学の西原春夫総長が、「指定校推薦で入学するのは卑怯な方法と感じる学生がいる」と発言したことを覚えているという。

「私が早稲田大学の記者会見を取材した際、当時の西原総長が、『指定校推薦で入学するのは卑怯な方法だと感じる学生がいるので、推薦枠を増やしたくない』と言ったので驚きました。確かに当時は国立も私立も一般入試が主流でした。しかし、この発言によって指定校推薦で入学した学生が肩身の狭い思いをしたことも事実です」