改正入管法の裏に隠された、外国人を巡る日本の「不都合な真実」

Session-22✖️現代ビジネス
荻上 チキ, 山口 元一

「外国人不安」が煽られる

チキ 人権問題も含めていろいろ対応しなくてはいけないという課題は今も継続しています。

最近でこそ人権の観点から外国人労働者の問題が取り上げられていますが、今日山口さんにご用意いただいた過去の新聞記事資料のなかで各メディアがこの問題をどう報じていたかというと、たとえば、2003年3月31日毎日新聞「続発する凶悪犯罪どう防ぐ 不法滞在外国人少年暴力団に重点」。

不法滞在外国人による大胆な犯罪が増加していると当時の毎日新聞は書いていたわけです。当時の犯罪データを見ると、記事とは違う状況もありますよね。

山口 そうですね。

今の例が示すことは、日本のメディアも常日頃から外国人を攻撃する記事ばかり書いているわけではなく、政府が不法滞在者を追い出すという方針をとると「不法滞在が悪い」という記事を書くし、政府が日系人を追い出すという方向に舵を切ると「日系人が悪い」という記事を書く、ということですね。

 

チキ 2003年当時、大胆な犯罪が増加していると書かれていますが、実際は不法滞在者による大胆な犯罪増加は見られませんよね。

山口 まったく見られないですね。当時は不法滞在者半減計画がまさに始まろうとしていた時期なので、キャンペーンに呼応しての記事ということです。

チキ 当時の新聞はいまよりデータを読むのが下手だったので、犯罪データを確認しようとしなかったのもうなずけます。

2005年12月1日産経新聞では広島市の女児殺害事件をうけて、「外国人労働者の増加が犯罪の増加と隣り合わせになっている実態が浮き彫りになった」と書いています。殺人事件は特異な事件ですが、これを代表として外国人による犯罪が増えていると議論しているわけです。

実際、在日外国人による殺人件数は2005年当時に至るまで、基本的には90年代と比べると減っている。横ばいの時期と減少の時期が繰り返されているので、増加、凶悪化とはいえません。でもそういう記事が出ていた。

〔PHOTO〕iStock

山口 先ほど説明したとおり、この時期にターゲットとされたのは、日系人です。この事件の最中に、先ほどの外国人問題のプロジェクトチームでは、日系人については、今後は受け入れすべきでないとマイナス評価を与えている。

まさにその時期にこの事件が発生し、南米人は危険だというマスコミ報道があふれ、しばらくして南米人について素行不良の人は追い出しましょう――この素行不良はそれまで追放の理由にはならなかった罰金などの軽微なものも含めるのですが――という内容の告示が法務省から出されます。

当時の法務省の説明としては、日系人としての在留資格で入国、在留する外国人による重大事件が発生し、治安に対する国民不安が高まっているということです。

つまり国民の不安を根拠として、これから日系人の在留は厳しくしましょう、としたわけです。ただその背景には研修生、技能実習生がより安価で管理された都合のいい労働力として台頭してきたことがあります。

チキ 「不安」という言葉を持ち出すのは、上手な手法ですよね。実数としてこれだけの犯罪が増加しているとか、これだけ治安が悪化しているといったエビデンスを出さなくても、人々が不安に思ってます、だからそうした方向に舵切りますというロジックには、反論しにくい。政府が煽るほどそうした実態を作れるわけです。