改正入管法の裏に隠された、外国人を巡る日本の「不都合な真実」

Session-22✖️現代ビジネス
荻上 チキ, 山口 元一

チキ あくまで今いる研修生・技能実習生を、労働法の適用対象にしますという形にはした。ところが、技能実習制度という建前と受け入れの構図そのものは変わってないわけですね。

山口 構図は変わっていないですね。

「研修」というのは基本的に座学だけということに改正されたので、それまでは技能実習生と研修生は半々くらいだったんですが、2010年の改正以降は技能実習生が圧倒的に多数を占めるようになりました。それは逆にいうと、それまではいかに「研修」という名目で外国人労働者を使用していたか、ということですよね。

チキ 逆に言えば、今は本当に座学で研修させようとことで、日本に連れてくる例はほとんどない、と。

山口 数は圧倒的に少ないですね。

チキ では、この段階で今の技能実習制度とほぼ変わらない形式ができたということになるわけですか。

山口 そういうことになります。

チキ 技能実習生の労働問題は、今でこそ非常にクローズアップされていますが、以前からも同じような労働問題――低賃金や労災、送り返し――はありふれていたんでしょうか。

山口 そうですね。それは一貫して現在まで続いています。

 

維持される「国際貢献」の建て前

チキ 2010年の法改正による、それまでの状況の「変質」や「固定化」があれば、それぞれ教えてください。

山口 まず「変質」について。2010年の改正は、技能実習生を低賃金労働力として使うことに関して、抜本的に変えるのではなく、「お化粧直し」のような改正だったと評価すべきだと思います。例えば転職ができないとか、国際貢献とほど遠い中小企業の現場で過酷な作業を強いる実態には変わりがなかったのです。

チキ 1990年代、オーバーステイの人を追い返していく背景には、日系人が次々やってきてくれたことがあったという話でした。しかしそのあとむしろ技能実習生が増え、さらに留学生も増えていくという状況があります。そのあたりの影響はどのようなものだったのでしょうか。

山口 先ほど触れたとおり、日系人は、研修生、技能実習生が低賃金労働力として日本で増えるに従い、徐々にマイナス評価を受けることになります。

チキ 日系人がより低賃金の研修生、技能実習生に置き換えられていく、と。

そのように大量に日本の労働市場に技能実習生が導入されているにもかかわらず、「国際貢献」という看板は、2010年にも下ろしてはないんですよね。

山口 下ろしてはいないです。ただし、2006年の法務副大臣プロジェクトチームは「国際貢献」の看板は邪魔だということを文書ではっきり残しています。

チキ 邪魔というのは、つまり、労働力としての議論をしましょうという話になったということでしょうか。

山口 そうです。研修・技能実習生に関して、プロジェクトチームは、研修と技能実習あわせて3年できっちり帰している点は高く評価できるが、対象職種や在留期間は国内企業における受け入れの切実なニーズに十分こたえるものになっていないとしています。

要するに定住化を阻止できている点はすばらしいが、国際貢献という建前があるので安価な労働力を求める国内企業の受け入れニーズにストレートに答える形になっていない、と。それがマイナス評価である、とういうことでした。

チキ つまり建前が邪魔なので、本音でいきましょうと法務省が言っているわけですよね。

山口 そうです。

チキ 入管が、というのはユニークですよね。たとえば厚労省や経産省が言うのであればまだわからなくはないですが、人権を守らなくてはいけない法務省の中の一部局である入管がそうした本音をいうのは…。

山口 入管が、というのはやや正確ではなかったかもしれませんが、入管のトップである法務省の副大臣が主査になっている外国人労働者に関するプロジェクトチームがそういっているので、そうまとめてよいと思います。

チキ いつしか技能実習生の問題は、労働者として受け入れるという方向に舵を切り、もっと多分野にわたって受け入れる方向性が、この段階で示唆されていた。

山口 そのとおりです。