改正入管法の裏に隠された、外国人を巡る日本の「不都合な真実」

Session-22✖️現代ビジネス

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※本記事は、TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』(11月26日放送)を編集したものです。

賃金を払わず、騙して母国に連れ帰る

チキ 1993年に技能実習制度が導入された後、たとえば問題事例が発生した、といった形で、研修制度が注目されたことはありましたか。

山口 研修・技能実習制度が建前は「国際貢献」であっても、実態は「低賃金労働力の受け皿」であるといったことが認知されるようになったのが2000年頃です。もちろんそれより前にも事例はあったとは思うんですけど、一部のNGOなどが彼らのおかれた立場について社会問題として取り組むようになったのは2000年頃からということですね。

チキ 2000年に入ってからは、研修生は、実質的労働者ではないかということで、労働者としての権利をめぐる裁判も行われたりしたんでしょうか。

山口 そうですね。

チキ とはいえ、建前上は研修なので、労働法の適用外ではあったわけですよね。

山口 原則的にはそうです。ただ、今の「インターン制度」などを想像していただけるといいんですが、労働法規は、実質的に雇用主の指揮監督下でもっぱら労働に従事しているということであれば、適用されるはずなのです。

チキ そうすると、労働法違反ということで訴えられる事例もある、と。代表的な事件をいくつか教えてください。

山口 研修生、さらにそれと一体化した技能実習生の件も含めると、たとえば、2006年、トヨタ自動車の下請け企業23社前後が技能実習生について最低賃金以下で働かせていました。同じく2006年の事例で岐阜県内の縫製工場で技能実習生を時給300円で働かせていた。

あるいは2008年に愛媛県今治市のタオル製造業者が中国人研修生3人に対して未払い賃金を支払うように労働基準監督署から是正勧告を受けたんですが、支払いを免れるために研修生3人を騙して中国に連れていって、そのまま置き去りにした事件も発生しています。

挙げていくと切りがないのですが、そうした事例が、この頃からよくマスコミ報道で報じられるようになりました。

チキ 賃金を払わずに、騙して母国に連れ帰って置いてくる、と。露骨な悪質事例ですね。しかし、これは氷山の一角でしょう。注目を集める大企業や業種だったからこうして報じられたけど、日常的なパワハラなどは隠れたところでたくさん行われているということですよね。

山口 枚挙に暇がないと思います。

 

外国人バッシングの歴史

チキ 先ほど、メディアがこうした事態を報じるようになったのは2000年代という話が出ました。一方で1990年代、2000年代のメディア振り返ると、「外国人バッシング」も当時からたくさんあったように思います。

山口 そうですね。時代は前後しますが、1990年入管法改正の後から2000年頃にかけて最もバッシングを受けたのは、いわゆる非正規滞在者、在留資格のないまま日本に滞在している外国人だと思います。

こうした外国人は、たとえば1993年の統計で見ると29万3800人――これは入管が、不法残留として把握している限りの数で、偽造旅券等で入国して在留期間更新をしている人がカウントされていないので、実際にはこれよりたくさんいたはずです。労働者としてはかなりのボリュームゾーンですよね。

この人たちは、それまでバブル期の人手不足に悩む日本の労働現場で重宝されていたのですが、日系人とその家族の入国が認められ、彼らの数が増えていくのと引き換えに、悪いレッテルを貼られてどんどん追い出しへ向かいます。

1990年の入管法改正、つまり日系人の導入を開始したのと同じ改正で、不法就労助長罪——不法に外国人を雇っている雇用主も罰する——が新設されますが、その後、日系人が順調に日本の労働者として増えていくのに伴って、不法滞在者に対する政策が黙認から排除へと変わっていく。

それとともにマスメディアにもネガティブキャンペーンが盛んに登場するようになって、人々の意識も変わっていったと。それが大まかな流れです。