文在寅とトランプ「かみ合わなかった米韓首脳会談」の舞台裏

朝鮮半島はこの先いったいどうなるのか

トランプ大統領の頭の中

先週、4月11日という日は、朝鮮半島にとって盛りだくさんの一日だった。

韓国では大韓民国臨時政府(日本植民地時代に上海で亡命政府を宣言)の100周年記念式典が開かれた。また北朝鮮では、年に一度の最高人民会議(国会)が開催された。一方、ワシントンでは、ドナルド・トランプ大統領と文在寅大統領の米韓首脳会談が開かれた。

それぞれの場で、朝鮮半島情勢を左右する3人のキーパーソン――文在寅大統領、金正恩委員長、トランプ大統領が、それぞれ「自説」を述べた日だった。

この3首脳の中で、いま最も優位な立場にあり、フリーハンドなのは、トランプ大統領である。トランプ大統領の意向次第で、3回目の米朝首脳会談も開けるし、逆に北朝鮮との交渉を打ち切って、空爆することだって可能だ。そのため、トランプ政権の対北朝鮮外交を分析することが、今後の朝鮮半島情勢を見通すために、第一義的に重要だ。

トランプ政権の外交指針は、2017年12月18日に発表した「国家安全保障戦略」で、明確になっている。その骨子は、以下の4点である。

①アメリカ本土の防衛
②アメリカの繁栄の推進
③アメリカのパワーによる世界の平和構築
④アメリカの世界での影響力拡大

このうち、トランプ大統領に「重要なものを二つ選んでほしい」と頼んだら、即座に①と②に印をつけるに違いない。

では、マイク・ペンス副大統領に頼んだら? 「二つなんか決められない、4つすべてが重要だ」と言いそうだ。つまりペンス副大統領は、トランプ大統領と比較すると、③と④に力点が置かれている。

このように、トランプ政権の外交は、「トランプ大統領的な考え」と「ペンス副大統領的な考え」の「二重奏」になっているのが特徴だ。それは、「目先の利益」を最優先するか(短期的アプローチ)、「恒久的な理念」を最優先するか(中長期的アプローチ)と言い換えてもよい。これは、対北朝鮮外交、対中国外交、対ロシア外交、対EU外交など、すべてに当てはまる。

そのことを念頭に入れながら、まずはアメリカ東部時間の4月11日昼に行われた、トランプ大統領と文在寅大統領の米韓首脳会談を見てみたい。

〔PHOTO〕gettyimages

テタテ会談は2分だけ

この会談は、一風変わったものだった。まず日程である。ワシントンの外交関係者が明かす。

「2月27日、28日のハノイでの米朝首脳会談が決裂した後、米朝の『仲介役』だった文在寅政権は、アメリカ側に米韓首脳会談の早期開催を要請した。それは、米朝間に生じた亀裂を、一刻も早く修復したいという目的からだった。

トランプ大統領は、北朝鮮とはすでに直接交渉しており、別に韓国大統領から助言が聞きたいとは思っていなかった。それで当初、難色を示していたが、ある『秘策』を授けられて、応じることにした。

それは、4月11日に、韓国では大韓民国臨時政府100周年の記念式典が開かれ、北朝鮮では最高人民会議が開かれる。そこで、この日に米韓首脳会談をぶつけて、ホワイトハウスから強いメッセージを出せば、朝鮮半島において引き続きアメリカが主導権を握れるというものだった。

だが、この日程を突きつけられた『青瓦台』(韓国大統領府)が、今度は難色を示した。大韓民国臨時政府100周年の式典は、文在寅大統領にとって、大変重要なものだからだ。それでもアメリカ側は『この日しか空いていない』として応じない。最後は文大統領が、しぶしぶこの日程で受け入れた」

ちなみに、大韓民国臨時政府100周年の記念式典は、次期大統領の座を狙う李洛淵(イ・ナギョン)首相が主催した。「1919年」を強調するため、わざわざ夜の19時19分に式典を始めたが、文在寅大統領が欠席したため、盛り上がりに欠けるイベントになった。これは文政権が仕掛けた一連の「反日イベント」の一つのため、日本にとっては救われたことになる。

 

話を米韓首脳会談に戻すと、その形式も、「3段構え」という珍しいものとなった。すなわち、最初にテタテ会談(両首脳に通訳を交えただけの会談)をオーバル・オフィス(大統領執務室)で30分、次に互いの側近を交えただけの少人数会合を、隣のキャビネット・ルーム(閣議室)で30分、そしておしまいに実務担当者を含めた拡大会合を同室で60分、計2時間というものだ。ワシントンの外交関係者が続ける。

「韓国側は特に、『テタテ会談を重視したい』と要請してきた。つまり文在寅大統領が、金正恩委員長の意向を直接、トランプ大統領にだけ伝え、大統領自身を口説き落とそうという算段だ。

これにアメリカ側は難色を示したが、やはり『秘策』を考えて受諾した。それは第一に、テタテ会談の冒頭で記者団を入れるが、その時間を最大限長くとって、トランプ大統領のメッセージを、テレビカメラを通じて、アメリカ国民と平壌に伝えること。第二に、テタテ会談にメラニア夫人を入れて互いに夫人同伴とし、『秘匿性』と『非公式性』を薄めることだった。

この日のトランプ大統領は、千両役者だった。30分のテタテ会談のうち、記者との応答に、何と26分も使い、残りはたったの4分。移動時間や通訳が訳す時間を除けば、文大統領が切望したテタテ会談は2分だけだった」

こうした背景のもとで、表面的には同盟国らしく友好的なムードだったが、実際にはギクシャクした米韓首脳会談となった。

冒頭のトランプ大統領と記者たちの26分のやりとり全文は、ホワイトハウスHP内の以下のアドレスで見られる。

https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-president-moon-jae-republic-korea-bilateral-meeting/?utm_source=link&utm_medium=header

そのうち、前述の「トランプ大統領的発言」と「ペンス副大統領的発言」を赤色と青色で書き分けながら、米韓両大統領の発言要旨を、以下に訳出してみる。