記憶力は「たった10分の軽い運動」でアップすることが判明

カギは「海馬を活発化」すること
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解析の結果から、超低強度の運動を行ったときは海馬歯状回と周辺皮質の活動が活発になることが分かった。周辺皮質は、感覚情報を受け渡しする領域のため、海馬歯状回と周辺皮質との情報伝達が活発になることで記憶力が向上したと考えられる。

超低強度の運動は、ラットやマウスでの実験のときと同様に、ヒトでも海馬を中心とした記憶システムを活性化して記憶力を高めることが分かった。

記憶図2 脳内メカニズムの解析
A:脳を横から見た図。赤が海馬、水色が海馬周辺の皮質領域を模式的に表したもの。
B:Aに示した断面で脳を前から見た図。この研究で解析した海馬の各部位と周辺皮質を色分けして示した。
C:海馬歯状回と、海馬に情報を受け渡しする周辺皮質の情報伝達が活発になった 拡大画像表示

キツすぎる運動は効果が薄いかも

超低強度の運動で記憶力がアップするのなら、もっと頑張ってハードな運動をたくさんすれば、記憶力がさらにアップするのではないか……と思うかもしれない。

研究グループはこれまでに、ハードな運動を長期に行う効果(慢性効果)を動物で実験している。残念ながら、ハードな運動を長く行っても、一過性の低強度運動で見られたような記憶力向上の効果は見られなかったそうだ。

その原因について、「ハードな運動を繰り返し行うことによるストレスの影響がある」と考えているそうだ。

運動ハードな運動も一過性なら…… Photo by naoaki imahori / Frickr

ところが、ハードな運動も長期でなく一過性のときは、ストレス反応が記憶力を向上させることも考えられるという。ハードな一過性の運動が、低強度の一過性の運動に比べてより大きな効果があるかどうかは、今後の検討課題の一つだと語る。

ヨガのような軽い運動をすると、記憶力が向上する Photo by Getty Images

また、研究グループは、運動のスタイルについて、「運動強度が同等でも、運動による気分の変化が脳への効果を左右する可能性がある。ヨガや太極拳のような生活・文化に根ざした運動や、自然の中で気持ちよく行うゆっくりとしたウォーキング、仲間と音楽に合わせて行う簡単な体操やダンスなどの軽い運動は、より効果があるかもしれない」と仮説を立てているそうだ。

楽しく気持ちよく記憶力を高めながら、今後の研究成果にも注目したい。

 

論文は、米国科学アカデミーの科学論文誌「PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」で公開された。

サイエンスポータル」過去の関連記事:
・2018年9月3日ニュース「浅い眠りを起こす遺伝子が分かった 理研グループ、睡眠障害研究に役立つと期待
・2017年9月14日ニュース「ハエは記憶と運動の情報を脳で区別して飛行

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