地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
この日、ジークムント・フロイト(Sigmund Freud、1856–1939)の設立したウイーン精神分析学会が中心となり、精神分析に関する初めての会合がザルツブルクで開かれました。
ウイーン精神分析学会は、それまでフロイトと、彼を支持する精神科医や心理学者らの集まり「水曜会(Psychological Wednesday Society)」が発展したもので、後の国際精神分析協会(International Psychoanalytical Association : IPA)の母体となりました。そのため、1908年のこの日の会合が、IPAの始まりと考えられれています。
フロイトは神経科医として臨床に携わりながら研究に勤しみ、脳性麻痺や失語症などについて業績をあげていました。
関連の日:5月6日 神経病理学者S. フロイトが生まれる(1856年)
一方、精神分析に関する研究は、それまでフロイトがほぼ単独で進めていました。性的な要因を強調しすぎることやフロイトがユダヤ人であることを理由にした差別から、一般にはまだ評価されず、医学界では根強い反発もありました。
しかし、徐々に彼の研究を支持する者が多くなったことで、大規模な会合が開催されたのです。
中心となったのは、水曜会の参加者であったオーストリアの精神科医アルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)、イギリスの精神科医アーネスト・ジョーンズ(Ernest Jones、1879-1958)、アメリカの心理学者G・スタンレー・ホール(Granville Stanley Hall、1844-1924)ら。そしてハンガリーの精神科医フェレンツィ・シャーンドル(Ferenczi Sándor、1873-1933)がこの集まりを組織的なものに育てたとされています。

また、統合失調症という疾患概念を確立させたスイスの精神科医オイゲン・ブロイラー(Eugen Bleuler、1857-1939)は、フロイトの理論を支持し、弟子のカール・G・ユング(Carl Gustav Jung、1875-1961)を会合に参加させました。

関連の日:7月26日 スイスの精神病理学者ユングが生まれる(1875年)
この会におけるフロイトの「ねずみ男(Rattman)」と呼ばれる強迫神経症患者の症例についての発表は、4時間にもわたるほどの盛況だったと言われています。
そしてブロイラーやユングが支持を表明したこともあり、フロイトの名前と『夢判断』が世界に急速に広まったと言われています。

その後、フロイトとユングが袂を分ったり、アドラーらが協会を去るなどの出来事もありましたが、IPAは国際組織として発展していきました。現在もイギリス・ロンドンに永久本部を置き、世界中に70以上の下部組織を擁しています。
日本では、東北帝国大学出身の精神科医、古澤 平作(こざわ・へいさく、1897-1968)によって1955年に設立された日本精神分析協会が、IPAに日本支部として公式に認められています。