トランプ「2020年再選戦略」の先に見える平和な時代の終わり

やりたい放題がさらに加速し…

アメリカのトランプ大統領は、ロシア疑惑という「喉仏に刺さった棘」がとれた途端、2020年の大統領選挙での再選を目論み、暴走し始めた。自身の支持者たちを繋ぎとめるため、あの保護主義とアメリカ第一主義を振りかざし、経済と安定を揺るがせ始めたのだ。

一連の再選戦略には、世界の貿易と経済の減速を招くリスクを一顧だにせず、欧州の航空機メーカー・エアバスに対する補助金を不当としてEU(ヨーロッパ連合)からの輸入品に制裁関税をかけたり、都合の良い金融政策を実現するためFRB(連邦準備理事会)に公然と理事人事で圧力をかける経済・通商政策運営や、イランの革命防衛隊を「テロ組織」と認定するような危うい外交・安全保障政策がテンコ盛りとなっている。

トランプ流の保護主義とアメリカ第一主義は、6月に大阪で開かれるG20(20カ国)首脳会議で、議長国として国際協調を謳い上げなければならない日本にとって、悪夢のような存在だ。近く本格化する日米貿易交渉でのアメリカの強硬姿勢を予感させるものにもなっている。

トランプ再選戦略の危うさを検証したうえで、日本の採るべき対応を考えてみよう。

 

米中貿易戦争はいつまで続くか

再選を狙うトランプ大統領にとって、昨年11月のアメリカ議会の中間選挙は危機感を募らせる結果だった。下院多数派の地位を守れなかっただけでなく、2016年の大統領選挙でトランプ候補の勝利の原動力になった中西部ラストベルト(錆びた工業地帯)で議席を失う異変が生じたからだ。

米調査会社モーニング・コンサルトの今年2月の調査でも、異変が改善する兆しはなかった。例えば、ミシガン州でのトランプ氏の支持率は、40%と政権発足時(2017年1月)に比べて8ポイント下がった。ウィスコンシン州でも6ポイント低下、ペンシルベニア州でも4ポイント低下と、2016年の勢いは失われた。

支持率低下の原因は明らかだ。中国との貿易戦争によって米国からの輸出品に報復関税をかけられ、中国向けの輸出が減少、製造業や農業を直撃した。加えて、TPP(環太平洋経済連携協定)から離脱したため、豪州やニュージランドの産品のように適用関税が下がらず、日本向けの競争力を失い、こちらでも輸出が減ってしまったのだ。特に牧畜や農業への影響は深刻で、廃業するケースが後を絶たず、支持者のトランプ離れが起きたのだ。

そうした中で、2016年の大統領選挙について、トランプ大統領候補個人とロシアの共謀を裏付けるような証拠はなかったと結論付ける、特別検察官報告が3月22日にバー司法長官に提出され、概要が漏れ伝わり始めると、トランプ氏は再選運動を開始した。3月28日、2020年の大統領選挙で大接戦が予想され、死守する必要のあるラストベルトのミシガン州で支持者集会を開いたのだ。

トランプ大統領は演説でロシア疑惑に触れて、「でっちあげが終わった」「無罪が完全に証明された」と強調。折に触れて、今後もラストベルトで遊説活動を展開するという。

割を食ったのは、中国だ。エスカレートする一方の貿易戦争を収束させようと、米国との貿易交渉で譲歩。農産物輸入の拡大や知的所有権の保護強化を打ち出したことから、終息が期待されていた。ところが、すんなりと事は運ばなかった。アメリカは、中国の約束した譲歩が実現するまで、制裁関税を継続すると言い出したのだ。今月中に、中国の習近平・国家主席が訪米して貿易戦争にピリオドを打つというシナリオの実現性も怪しくなっている。

日本の通商関係者の間では、来年の大統領選挙の際に実績として訴えるため、米中貿易戦争は「結論を先送りしたまま、小康状態に入るのではないか」と分析する向きがある。そうしておけば、自身の支持者たちの風向きを見ながら、必要に応じて、中国を叩くこともできれば、自身の強行策で中国の譲歩を引き出したとお手柄を演出することもできるからである。中国にすれば、何のために譲歩したのかわからない、屈辱的な話だろう。

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