狙いは「金」より凄い「世界初」地震研究者が金鉱深くで掘削するワケ

震源を直接観察して地震のルーツを探る

とりわけモアプ・コツォン金鉱山では、地下3kmからわずか600~800m掘り進めるだけで、いまも余震活動が続いている2018年6月の大阪府北部地震と同じ規模の地震の震源断層の直接調査と貴重な試料の回収ができる。小笠原は期待を寄せ、こう語る。

「これは世界初の試みです。自然地震の地表付近からの観測で捉えられなかった震源の生の姿の調査は、地震発生のメカニズムの未解明な部分の答えが得られる可能性を秘めています」

小笠原が率いる日本と南アフリカ共和国がリーダーシップをとり、スイス、アメリカ、ドイツ、インド、オーストラリア、イスラエルの研究チームが協力して掘削・調査を進める

小笠原の研究チームは2010年から2015年にかけてJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)とJICA(独立行政法人国際協力機構)による「地球規模対応国際科学技術協力」プロジェクトなどで、金鉱山の地下1~3.4kmで発生する地震を至近距離で観測することに成功している。

今回は地震学や岩盤工学に加えて地質学、構造地質学、地球微生物学など幅広い学術分野の研究者が協力し、震源近くの地震活動と地質構造のみならず、地下水や微生物活動についても調査する。

採取した試料はICDPにデジタルアーカイブされ、いずれ国際的に公開され多分野の研究に生かされることになる。

「コア」に隠された地震のルーツ

震源を観測するにはあらかじめ地震の発生時期と場所を特定し、震源付近に超高感度地震計を埋め込んでおく必要がある。南ア協力機関や日本が観測した掘削対象の本震と数十万個の余震や極微小地震データに基づいて、小笠原らは掘削計画をたてた。

2017年6月、いよいよ地下2.9kmの坑道からM5.5の余震が発生する一帯の上部を貫通する場所と、至近距離で横断する場所を目指して2本の孔の掘削を開始。口径約76mmで、長さ約820mと約700mを掘削し、コアと呼ばれる棒状の試料の回収を試みた。

2018年2月、2本目の掘削がM5.5の余震発生帯を貫通。そこは、きわめて断層すべりが起こりやすい物質をもつ、2mよりも薄い断層破砕帯であった。

地震発生地帯は、掘削方向が悪いと掘削中に粉々にコアが砕けてしまう。
そうならないように総延長約1.6kmのコアを回収することに成功した

「M5.5の地震やその余震によって起こったと考えられるフレッシュな破壊箇所や、過去に地震発生歴がない岩盤に圧力が集中したことによってできた新しい亀裂群など、非常に興味深い試料を数多く回収することができました」

さっそく震源断層とその周辺の応力や物性、岩盤の割れ方などの測定や詳細な構造地質学的解析が始まっている。