岩崎夏海が「ドラッカーの聖地」で明かした『もしドラ』秘話

大ベストセラー著者に「ドラッカー自伝」翻訳者・牧野洋が聞いた [前編]
牧野 洋 プロフィール

 ドラッカースクールへはとりあえず400万円程度寄付する。海外のビジネススクールへ寄付する日本人作家は異例だ。

 クレアモントでは、5月20日までの滞在中に、ドラッカー関係者から大歓迎された岩崎氏。ドラッカースクールの学長らと一緒にエンゼルスの試合を見るなど、充実した6日間を過ごせたようだ。「こんなに歓迎されるとは思いもよりませんでした」と驚いている。

 忙しいなか、岩崎氏は「『現代ビジネス』用に対談する機会も設けてくれませんか」という依頼を快く受け入れてくれた。私事になるが、ドラッカーが自伝『知の巨人 ドラッカー自伝』(日本経済新聞「私の履歴書」が土台)を書くに際して、インタビューや資料集め、解説執筆といった形でドラッカーに協力したことがある。それが遠因になり、私は今クレアモントに住んでいる。

『もしドラ』と松井秀喜の意外な関係

牧野 初のカリフォルニア訪問。2日目の日曜日、念願かなってアナハイム・エンゼルスの試合を見ることができましたね。

アナハイム球場の貴賓室でエンゼルスの試合を観戦中の岩崎氏

岩崎 『もしドラ』を書き上げて、実際に出版になるまでの間、苦しい時期がありました。たとえて言うなら、「大学受験が終わったのに、合否の発表はまだ」という時期で、不安でいっぱいでした。

 そんな時、ニューヨーク・ヤンキーズの松井選手が大リーグのワールドシリーズで大活躍し、最優秀選手(MVP)に選ばれました。非常に興奮し、勇気を与えてくれた松井選手に感謝する気持ちになったのです。

 大リーグはずっと見たかったけれども、これまで1度も見たことがありませんでした。アメリカに来たからにはぜひ観戦したいと思っていました。

 偶然ですが、クレアモントからアナハイム球場まではすぐに行けます。しかもアナハイム・エンゼルスには松井選手がいて、たまたまぼくの滞在中にホームでプレーする予定でした。これを見逃すわけにはいきませんでした。

 アナハイム球場での試合観戦は期待通りに楽しめました。ぼくはエンターテインメントの世界にいますから、アメリカでは野球そのものよりも、野球を楽しんでいる人と演出している人を見たかった。それがとても良かった。松井選手も1安打、1打点できちっと活躍してくれました。

 日本では、試合と関係なく1回の表から太鼓をたたいてどんちゃん騒ぎを始めます。だから球場が嫌いでした。アメリカは180度違いました。1回の表はしーんと静まりかえって、みんなハンバーガーを食べたりコーラを飲んだりしています。観客も選手も、1回の表が重要でないと分かっているのです。

 野球は9回の裏に向かって盛り上がっていくべきです。最初からどんちゃん騒ぎでは9回の裏まで持たないで、息切れしてしまう。

大学を中退したスティーブン・ジョブズ

牧野 アナハイム球場では貴賓室で観戦。しかも、ドラッカースクールからアイラ・ジャクソン学長やドラッカー研究第一人者のジョー・マチャレロ教授をはじめ、総勢10人以上が同席したそうですね。

アナハイム球場でドラッカースクールのマチャレロ教授(右)と

岩崎 大変な歓迎で、びっくりしました。みなさん何でこんなに親切なのか、不思議でした。アメリカ人は人づきあいが上手です。人を楽しませる習慣を自然と身に付けているようです。人にもよるでしょうが、生まれながらエンターテイナーが多いのかもしれません。

 最初は自分でチケットを買い、外野席で見るつもりでした。でも、ドラッカースクールから「ぜひこちらで招待させてください」と言われ、お言葉に甘えさせていただきました。貴賓室で学長まで同席してくれるとは、予想外でした。