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ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは

東京地検が真っ青になった…?

「4度目の逮捕」異例の背景

4月4日、東京地検特捜部は保釈中のゴーン被告の4度目の逮捕に踏み切った。

容疑は、会社法違反(特別背任)。日産の資金を中東オマーンに不正送金し、同社に損害を与えたというものだ。

「追起訴はあるかもしれないと思っていたが、逮捕になるとは、まったく予想できなかった」

ゴーン被告の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は、逮捕後の会見でそう述べたが、それもうなずけよう。容疑は前回の逮捕容疑と類似しており、通例ならば追起訴で済むはずだった。

報道陣にとっても予想外の事態であったようで、報道各社はゴーン「被告」の肩書を急遽、「容疑者」と改める慌てぶりだった。すでに起訴されている罪状がある以上、被告であることに変わりはないものの、逮捕後は容疑者としての立場にもなるためだ。

ともあれ、ゴーン被告は約1カ月前の3月6日に108日間の勾留を経て保釈されたばかりであったにもかかわらず、再び逮捕・収監されたわけだが、「特捜部の事件で保釈後、余罪で再逮捕されるのは異例中の異例だ」との批判が絶えない。

いったいこの背景には、何があったのか。

 

なぜか「イチローの情報収集」…?

その10日ほど前のこと――。

筆者の取材に応じた東京地検関係者が、吐き捨てるようにこんなコメントをしたのを耳にした。

「保釈後、ゴーンは自由に行動し、公判対策のためにあちこちで関係者と接触している。しかも、ゴーンと接触した関係者が、ゴーンの指示を受けてさらに多くの関係者にコンタクトしている」

ゴーン被告が保釈されたのは、弁護側が提示した条件に裁判所が納得したからだとされる。すなわち、海外への渡航禁止、住居に防犯カメラを設置し記録を定期的に提出すること、携帯電話はネットに接続できないものを使用し通話記録も残すこと、パソコンは弁護士事務所にあるネットに接続していないものを使う――といった制限のことだ。裁判所は、ゴーン被告がこれらの条件を守るならば証拠隠滅は図れないと判断したとみられる。

だが、元検事の弁護士(ヤメ検)をはじめ、多くの法曹関係者から「この条件では証拠隠滅は防げない」と疑問の声が上がっていたという。

具体的な指摘もあった。「外出先で携帯電話やパソコンを借りれば、第三者と接触するのは簡単だ」といったものだが、どうやら実際はそれ以上の状況だったようだ。ゴーン被告の動きは、それほど活発だったとこの知見関係者はいうのである。

もっとも、東京地検特捜部も手をこまねいていたわけではない。捜査員をフルに動員し、24時間体制で監視や通信傍受に当たっていた、という。

その最中、ゴーン被告と彼の陣営が目論む「抜け目ない法廷戦術」の一端を垣間見たのだという。前出の東京地検関係者が語る。

「ゴーン当人および周辺人物の動きを追い、会話の内容などを確認すると、つい先頃引退した大リーグのイチロー選手に注目し、彼の報酬の受け取り方について、情報収集と分析を綿密に行っていることがわかった。

そこで、どこに焦点を当てているか精査してみると、非常にまずいことが判明した。イチロー氏が選手だった時の『出来高報酬』の例を法廷に持ち出されて援用されると、厳しいということだ。下手をすると、役員報酬の虚偽記載容疑が成り立たなくなってしまう」

イチロー氏と言えば、日産との関わりが深い。数多くのCMに出演しており、ゴーン被告が社長を務めている時期にも起用されているため、イチローサイドとのコネクションがあっても不思議ではないが、それにしてもなぜイチロー氏のことを持ち出されると、役員報酬の虚偽記載が成り立たなくなるというのか。