SDGsが世界で注目を集める中、日本でも “持続可能であること” はキーワードになっています。今月号からサステナブルライフにつながる日本の活動を紹介する連載がスタート。第1回は、健康を考えた量り売り専門店〈バルクフーズ〉です。

持続可能で合理的な
量り売り専門店

常連客らしき男性が持参した容器にナッツを詰め、初めて来店したという親子が楽しげに機械のボタンを押してピーナツバターを搾り出している。外国のスーパーマーケットのようにも見える「バルクフーズ」で販売されているのは、ナッツやドライフルーツ、雑穀、オイルといったナチュラルフード。基本的には、パッケージレスの量り売りスタイルだ。

代表の伊藤弘人さんは、長年、スーパーマーケットで働いてきた小売業のベテラン。

「前職ではアメリカ各地へ研修に行くことが多く、訪れた現地のオーガニック系やファーマーズ系のスーパーマーケットでは野菜やグラノーラなどの量り売りが普通に行われていました。容器を持参してもらえば、ゴミもパッケージのコストも減るし、自分で詰めるから人件費も減る。理に適ったスタイルだなぁと印象に残りました」

無漂白のドライマンゴーや、味噌汁や炊き込みごはんに重宝する乾燥野菜ミックス、珍しい皮付きのカシューナッツ、野菜の粉末やスパイス、数種類の塩など、取り扱い商品の種類は多岐にわたる。ほとんどの商品は、スタッフに声をかければ試食させてもらえる。「自分が食べるものは、自分で確認して選ぶことが大事。すぐに買えるコンビニの惣菜でいいや、適当でいいやと考えることを放棄してしまえば、味覚も選ぶ力も鈍ってしまいます」と伊藤さん。

もともと自分も家族も病気がちだったため、「健康なからだは食べるもので作られる」と考えていた伊藤さん。体にストレスをかけない、栄養が豊富な自然食品を食べたい。でも日本では高額だったり売っている場所が少なかったり。

便利なほうに流されがちな世の中に疑問を持っていたこともあり、ナチュラルフードを量り売りする店を作ってみようと思い立った。考えてみれば、日本でも昔はせんべい屋や乾物屋などは、店先で買いたい量を伝えて、紙袋にがさっと入れてくれるスタイルだったはず。日常的に食べ続けられる手頃な価格も、量り売りなら可能かもしれない。

「いいものがあれば、どんどん取り入れていきたい」という伊藤さんのフットワークの軽さもあって、今ではバルクフーズのナッツを使ったおいしいソーセージや、自然や素材にやさしい洗剤まで、商品のカテゴリーは広がっている。

パッケージレスとなると、日本の温度や湿度がハードルになったけれど、一年中24時間、店内の温度を一定に保つことで品質を管理している。

「百貨店などから出店依頼もよくいただくんですが、この環境を整えるのが難しくて」

少しずつ必要なものが買えるのも量り売りの利点だから、多品種の商品を仕入れることにもこだわった。すべてが有機(オーガニック)認証をとっているわけではないけれど、伊藤さんが良いと認めたものだけをセレクトしている。アガベシロップに漬けたドライトマトは、伊藤さんが企画したオリジナル商品だ。季節の限定品もあるから、通いたくなる。

いずれは、すべての人が容器を持ってきてくれるのが理想だけど、初めての人のためにも、無料(一部有料)の簡素なパッケージも用意している。次回の来店時に、その容器を再利用する人も多い。

「オープンして今年で5年、容器を持ってきてくれる常連さんも増えました。お医者さんに勧められて、という年配の方も、晩酌のつまみにという人もいます。からだに良いものを食べさせたいというお母さんに抱っこされていた子が、いつの間にか小学生になって、自分でお小遣いを持って買いに来ることも。こうして、ナチュラルフードや量り売りスタイルが当たり前になっていったらいいですね」

と伊藤さん。個人の思いが込められた小さなショップから、世界は少しずつ変わっていくのかもしれない。

バルクフーズ 元住吉店
神奈川県川崎市中原区木月祇園町7-13 メゾンSK 102
☎044-750-7899
営業時間:11:00~19:00
定休日:第3木・不定
ほかに「バルクギア元住吉駅前店」や「バルクフーズ新丸子店」もあり。
https://www.bulkfoods-market.com/


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Design:Noriteru Minezaki Photo:Koichi Tanoue Text:Shiori Fujii Edit:Chizuru Atsuta