SDGsが世界で注目を集める中、日本でも “持続可能であること” はキーワードになっています。今月号からサステナブルライフにつながる日本の活動を紹介する連載がスタート。第2回は、多様性を生かして野菜を育てる〈すどう農園〉です。

“あるもの探し” で
大事な繋がりを取り戻す

ルッコラとネギ、小松菜などを同じ畑で栽培している。

相模湖のほとりの里山で「すどう農園」を営んでいる須藤章さん。畑を耕すこともしないし、農薬も除草剤も化学肥料も使わない。さらに動物性の厩肥も使わない。なぜかといえば、身の回りにないものは使わないようにしているから。

「ここでは動物を飼っていないから、動物性肥料は買うしかない。でも餌は遺伝子組み換え飼料が多く、どんなものか把握できないから使わない。シンプルな理由でしょう」。

ないものは使わないけれど、あるものを探して利用する。

「例えばこのルッコラの根元にあるのは、すべて周りの草を抜いたものや、枯れたもの。これらの根っこに集まった微生物によって、土そのものが発酵して栄養になるんです」。

もしトラクターで土を深く耕してしまったら、そういう自然の繋がりを断ち切ってしまう。だから一般的な農法だと、耕した後は堆肥を入れて土作りをしなくてはならない。だけど自然の繋がりを活かせば、上にどんどんいい土が重なっていく。これは森の仕組みと同じだそうだ。

植物の根は土から水や養分を吸い、土の中の微生物は根から分泌されている成分をめがけて集まってくる。その相互作用を生かすのが自然栽培。「繋がりに気づけば、“あるもの探し” はすごく楽しいんですよ。ないものを探して疲れるよりも、身の回りにあるものを見つけるのが、幸せになれるカギ。ここで農的な暮らしを知ると、都会の生活に疲れた人たちも元気になって、ラクに暮らせるようになるみたいです」。

「この仕組みを作るために “あるもの探し” をするんです。コーヒーカスや生ゴミも、発酵させれば肥料になる。自分の食べる野菜の肥料になると思えば、オーガニックのコーヒー豆を買おうっていう気持ちにもなるかもしれない。農薬を使わないから虫もいますよ。でもアブラムシがわけば、それを餌とするテントウムシもやってくる。枯葉が落ちれば、ミミズがそれを餌にして土が肥えていく」。

すべては繋がっていくし、繋がりは多様性があってこそだと気づく。「すどう農園」の畑を見れば、小松菜の横にルッコラ、その横にネギと、いろいろな野菜が混在している。

「人間社会も老若男女いろいろなタイプの人がいるように、畑も種類が混在しているほうが安定するんです。植物の根は横に広がるから、植物の根と微生物が共生して土という世界を作ります」。

無理なことも無駄なこともないから、ずっと続けていけるはず。須藤さんが「さとやま農学校」という講座を開き、たくさんの人に自然栽培や農的な暮らしの楽しさを伝えているのも、都会と農的世界を繋ぎたいから。

畑の片隅にトマトが一つ落ちていた。「夏に落ちて4ヶ月以上経っても、しなびていくけど腐らない。発芽してもいい気候になるまで、自分の果肉で種を守っている。植物自身が持っているシステムってすごいんです」

また須藤さんは、植物の多様性を支えるのは種だという。

「種は “遺伝資源” です。だから、国家や企業といった形の恣意的なコントロールに脅おびやかされがち。市井の人々の手で種をとり、継いでいけば守っていけます。在来種や固定種というのは、そうやって守られてきたんです。種を守るためにも自家菜園は、種を守る場所としての原点です」。

そもそも野菜が商品になったのは近世のことだそうだ。かつては大都市を別にすればほとんどの人間が農民だったから、野菜は売るものではなく、食べるために作るものだった。自分でつくった野菜から種をとってまた野菜を育てるのは、自然な暮らし方なのだ。

「この小松菜は東京で40年継がれてきた種をいただいて、ここで3年継いでいます。自分で栽培して、花を咲かせて種をとる。花もおいしいですよ」

「採れ高や収穫時期を重視した商売のための大きな農園となると、自然栽培も自家採種も生産効率が悪くなる。だけど自家菜園くらいの小規模なら、自然と対話しながら多様性を生かして野菜を育て、種をとって継いでいくということが可能なんです。それは環境にもよく、種を守ることにもなります」。

多くを欲張らず、繋がりを大事にし、人にも自然にも無理のない方法で生きていく。それこそが次世代に豊かな食を繫いでいく方法なのだと、須藤さんは教えてくれた。

すどう農園
☎090-1203-0307
日帰り農業体験「さとやま農学校」や「さとやまハーバルライフ」など、農的生活の楽しさを伝える講座も開講。自然農法でできた作物で、無添加の加工食品も作っている。
www.sudofarm.net

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Design:Noriteru Minezaki Photo:Koichi Tanoue Text:Shiori Fujii Edit:Chizuru Atsuta