GAFA帝国への抗い デジタル・プラットフォームの未来を問い直す

無茶ぶりエッセイ お題は「必要悪」!
水越 伸 プロフィール

私たちの身の回りには、CO-OP、学生生協、農協や漁協、信用金庫など、よく考えてみるとさまざまな協同組合がある。一見違うもののように思われるが、それらはいずれも同じ仕組みで動いているのだ。

1895年に設立された国際協同組合連盟(ICA)によれば、協同組合とは、共同で所有され民主的に管理される事業体を通じて、共通の経済的・社会的・文化的なニーズをかなえるために自発的に手を結んだ人たちの自治的な組織である。

ポイントは誰もが一人一票を持ち、自主的で平等にものごとを進めるという原理にある。株式会社とも共産主義とも違う、百数十年続いてきたこの協同組合のあり方に、今再び注目が集まりつつある。

協同組合Photo by Tim Green / Flickr

「夢見る権利」を放棄してはならない

インターネットは90年代のカリフォルニア・ドリームの世界からすっかり変わって産業化してしまったといわれる。

しかしEFF(電子フロンティア財団)、ウィキメディア財団オープンナレッジ財団などインターネットの公共性を重んじる組織は健在であり、ブロックチェーンに基づく新たなシェアリング・エコノミーによって、プラットフォーム資本主義をプラットフォーム協同組合主義へ転換していこうとする動きも生じている。

2010年代、私たちを取りまくメディアの生態系は、SNSとスマートフォンでのっぺり塗り固められ、その裏側で必要悪のようにして広告ビジネスが横行していた。その状況がおよそ10年続いている。

人々はそのあり方を当たり前のこと、変えられないものと思い込み、SNSは便利だからと個人情報の収奪には目をつぶり、広告収入を必要悪だとして甘受してきた。

しかし眼をこらせば、のっぺりして均質な見える生態系のあちこちにすきまや孔(あな)があき、そこから先にあげたような新しい動きが芽生えつつある。少なからぬ人々が、今あるメディアとはちがうメディアのあり方を夢見ているのだ。

もし誰もが納得できる稼ぎ方をするデジタル・メディアが持続的に運営可能となるならば、それは柄谷行人の夢物語や髙木先生の研究を具現化することになるだろう。

そのチャレンジに何度失敗したとしても、私たちは「夢見る権利」を放棄してはならない。

■参考文献・情報
・勝野正博『プライバシーポリシーの歴史的変遷:生活者と事業者のコミュニケーションに関するメディア論』(2018年度東京大学大学院情報学環修士学位論文)、2019年
・Martin Roth(マーティン・ロート)『The Suspension of Media Literacy (メディア・リテラシーの一時的停止)』「5: Designing Media Ecology. 8th issue」pp.54-67、2018年
・柄谷行人『世界史の構造』岩波現代文庫、2015年(初出2010年)
・NHK NEWS WEBビジネス特集「私のデータを渡さない!アンチGAFAの新サービス」(2019年1月22日、リンクは4月3日確認)
・ガストン・バシュラール著/渋沢孝輔訳『夢見る権利』ちくま学芸文庫、1999年(原著1970年)

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