GAFA帝国への抗い デジタル・プラットフォームの未来を問い直す

無茶ぶりエッセイ お題は「必要悪」!
水越 伸 プロフィール

一つは個人情報を収集・加工した広告ビジネスに依存しないSNSや検索エンジンなどのサービスが内外各地で実用化されつつあることだ。

たとえば僕は最近「DuckDuckGo」という検索エンジンを使いはじめた。Googleで「Google以外の検索エンジン」と検索してみつけたのだ!

Google以外の検索エンジンを使うのは何年ぶりのことだろうか。2000年代初頭、gooExciteがGoogle以上の性能と知名度を持っていたころ以来だと思う。

使ってみるとなんだか不思議に新鮮な感じがする。たとえていえば、エコも大事だなと思って何気なく環境に優しい洗剤をみつけて使いはじめてみたらそれが気に入り、料理から掃除まで家事全般を見直しはじめるような、わくわくした感覚に似ているといえばよいか。

アメリカの片田舎で生まれたDuckDuckGoは日本語で「あなたを追跡しない検索エンジン」というスローガンが付いていて、そのとおり個人情報を収集したり、利用者履歴を追跡しないエンジンで駆動している。これが素朴なインターフェイスながら、かなりサクサク動いていい感じなのだ。

duckduckgohttps://duckduckgo.com/ より

GoogleではなくDuckDuckGoを選ぶことから、僕に自分のデジタル環境を見なおす気持ちが生まれた。さらにサーバーを自由に選べるmastodonというドイツ生まれのSNSを使いはじめた。これもおもしろい。

DuckDuckGoやmastodonが今後たとえ事業として失敗したとしても、その存在はGAFAやFANG以外の可能性を具現化していて、そのことが私たちのリテラシーに与える効果は計り知れない。

昔あった相互扶助的なラジオ・ネットワーク

もう一つは協同組合という社会経済様式についてである。

この連載で以前、大学院時代の指導教員であった髙木教典先生の「学問のたわけ論」に触れたが、その髙木先生が後にも先にも一度だけ、僕をフィールドワークに連れて行ってくれたことがあった。

行き先は佐賀県の唐津ケーブルテレビジョン。なぜ唐津だったのか。この事業体が1980年代後半当時、全国唯一の生活協同組合法人だったからだ。

先生は僕にMBSのことも教えてくれた。MBSはMutual Broadcasting Systemの略称で、1930年代から90年代までアメリカにあったラジオ・ネットワークである。

Mutual Broadcasting SystemMBSのロゴ

日本の民放ネットワークはそれぞれ独立した会社である放送局の協議会であり、米国のネットワークはそれ自体が一つの企業であり、それが各地に直営局や加盟局を持つというちがいがある。しかしいずれも番組は、放送局やネットワークという企業が制作し、著作権を持つ場合がほとんどだ。

ところがMBSはMutualという言葉が意味するとおり、番組を相互扶助的に制作し、配給する仕組みで経営されていた。それで三大ネットワークに互して戦っていたのである。

マルクス主義経済学を学び、マスメディア産業論が専門の髙木先生の意図が、今だとはっきりわかる。先生は資本主義的ではないメディアのあり方、柄谷が目指した協同組合主義的な存立様式を探っていたのである。