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これは「熱帯低気圧のタマゴ」? AIに判定してもらいましょう!

気象学にもAI革命を!

最近、「人工知能」という言葉を目にする機会が増えていると感じませんか? ディープラーニングなど人工知能の技術が急速に進化し、さまざまな分野に応用され、身近なところでも使われています。気象分野でも、人工知能を用いて熱帯低気圧のタマゴを精度よく検出する方法が開発されました。新しい台風発生予測の実現に向けた大きな手掛かりとなる成果です。論文を発表した地球情報基盤センターの松岡大祐技術研究員と杉山大祐技術副主任にお話を聞きます。

写真1 杉山大祐技術副主任(左)と松岡大祐技術研究員(右)
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──なぜ熱帯低気圧のタマゴを検出する手法の開発に取り組むことになったのですか。

松岡 JAMSTECが持っている海洋や気象などのビッグデータを活用して、社会の役に立つこと、また研究としても面白いことをしたい、と思っていました。その1つが、熱帯低気圧のタマゴの検出だったのです。熱帯低気圧の発生をいち早く予測できれば、災害の軽減にも貢献できるでしょう。

──熱帯低気圧になる雲と、熱帯低気圧にならない雲を、人が見分けることは難しいのですか。

松岡 下の3枚の雲画像の中で、熱帯低気圧のタマゴはどれだと思いますか?

図1 熱帯低気圧のタマゴはどれ?

松岡 答えは①と②。熱帯低気圧のタマゴを正しく識別するのは、専門家でさえ難しいそうです。

そこで、熱帯低気圧の研究をしているJAMSTECシームレス環境予測研究分野の中野満寿男さんと、そのタマゴを検出する方法の検討を始めました。

すると「人工知能を使えばできるのではないか」となり、さっそくやってみました。ところが、検出精度がいまひとつ。そこで人工知能の1つであるディープラーニングのプログラミングについてさまざまなノウハウを持っていた杉山さんに相談したのです。

杉山 ビッグデータをどのように解析して有用な情報を導き出すかが、データサイエンスの重要な課題になっています。私は、人工知能が鍵となると考え、少しずつ勉強をしていました。

──人工知能とは、どのようなものですか?

杉山 コンピュータ上で人間と同様の知能を実現することや、そのための技術を「人工知能」といいます。特に学習に関する仕組みをコンピュータで実現しようとするのが「機械学習」で、データから判断基準やルールを学習し、新しいデータに対して予測や識別を行うことができます。

人間の脳の神経回路網をモデル化したニューラルネットワークを多層にしたものがディープニューラルネットワークで、それによる機械学習を「ディープラーニング」と呼びます。

その中でも特に、脳の視覚野の神経回路網をまねた「畳み込みニューラルネットワーク」の多層化技術が進歩したおかげで、近年では画像に対する認識精度が圧倒的に向上しました。

図2 人工知能、機械学習、ディープラーニングの関係
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松岡 写真に写っている動物がネコかイヌかを識別する場合、従来の機械学習では、人がネコやイヌの特徴を定義しておく必要がありました。

一方で、ディープラーニングでは、特徴を自動的に抽出しながら学習します。経験則や思い込みが取り除かれ、専門家でも認識していなかった特徴も使って識別するため、識別精度も大幅に向上しました。