大型スーパーのが安いのに

モノの値段だけをくらべたら、パリの大通りや広場に定期的に設けられる青空マルシェや常設マルシェは、スーパーで売られている商品にくらべ、必ずしも安いとはいえない

財布の紐がやたらと硬いはずの、年金生活者のおばあさんやおじいさんから大学生まで、パリっ子のだれもが、大型スーパーよりも高いことを知っていてなお、古くから決められた場所で開催されるマルシェにこだわる。カレンダーを眺め、マルシェが開いている曜日を確かめ、買い物かごをぶらさげて勇んでアパートの階段を駆け下り、出かけていく。そうすることが彼らの心と体に、素晴らしい充実感をもたらしてくれることを知っているからだ。

青空の下、ロワール川沿いの果樹園で収穫された新鮮な果物、ブルターニュの漁港に陸揚げされた魚介類、地中海の太陽をたっぷり浴びたオリーブの実など、さまざまな食材の醸しだす香りが、マルシェに集まった人々の気持ちを豊かなものにする。そうしたメンタルな意味でのメリットだけでなく、マルシェには合理性にたけたパリっ子を納得させるだけの強みがある。

ブルターニュから水揚げされたばかりの魚介類も新鮮で美しく、ワクワクしてくる Photo by iStock

フランス人の美意識を賞賛したくなるほどみごとなピラミッド型に、きっちりと積み上げられているオレンジもアーティチョークも、マルシェでならたった一つから買える点である。ハイパーマルシェで大袋に入ったトマトは安いにちがいないのだが、冷蔵庫の中で腐ってしまってはむしろ高くつく。ハム一枚、鴨のムネ肉一枚、一つまみのマッシュルームといったぐあいに、小刻みな買い方ができるのがマルシェならではの魅力である。