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ケチと言われるフランス人が、割高のマルシェではお金を使うワケ

お金がなくても平気なフランス人③

20代で渡仏し、20年住んだのちに家族で帰国、現在は日本在住のエッセイスト、吉村葉子さん。2007年に刊行し、文庫だけで37万部を超えたベストセラー『お金がなくても平気なフランス人、お金があっても不安な日本人』からオンラインで初めで記事を紹介する第3回。「ケチ」と言われるフランス人が、スーパーより割高だとわかっている市場ではお金を使うという。その理由は……。

フランス人はケチというより「しまり屋」

フランス人って、ケチでしょう

そう聞いてくるのは、20年という長期にわたり私が、パリに住んでいたということを知っている人たちにほかならない。そんなとき私はいつも、こう答えることにしている。

そう、フランス人はだれもが、しまり屋なのよ

ケチとしまり屋では、言葉のニュアンスがだいぶちがうと思う。フランス語でこの二つの言葉を表すと、それこそ天と地ほどのちがいがある。ケチという言葉についてはいくつかの単語があるのだが、どれもキレイな言葉ではない。それに対してしまり屋についていえばひとこと、エコノムéconome。会計係や経済家、それと倹約家が同語である。フランス人の名誉にかけて私は、彼らのことをケチではなく倹約家、つまりしまり屋ということにしたい。

 

週末の市場にいそいそと行く

パリには様々な顔がある。

金曜の夜、カフェのオープン・テラスに、ジャズ・バーに、時計を外したパリっ子たちがワイン片手に怪気炎を上げる不夜城のパリ。サン・ジェルマンやシャン・ゼリゼ、バスチーユあたりで夜を徹して語り合い、抱き合う男女がいる。ときに背徳の香りまで漂わせる彼らがパリっ子なら、一夜明けた土曜の朝、近くのマルシェで果物や野菜を物色するのも同じ彼らである。

パリのシャイヨで開かれているマルシェ。山積みの新鮮な野菜や果物、チーズや魚介類を求めて多くの人が集まる Photo by iStock

パリっ子は知っている。週末のマルシェ(市場)でもとめた新鮮な野菜や果物、焼きたてのバゲットが、どれだけ自分たちの生活を豊かなものにしてくれるかということを。

いつもは仕事帰りの慌しさの中で、そそくさと通りがかりのスーパーで足りないモノを買う。あるいは月に一度か二度まとめ買いするために、郊外のハイパーマルシェに車で出かける。ダンボールの箱ごとのミネラルウォーター、ビールや砂糖、小麦粉、トイレットペーパーやシャンプー、洗剤をつぎつぎと大きなカートに入れ、長蛇の列をものともせずにレジに並ぶ。

大型スーパーはどこも、消費者にとって魅力的な価格帯で商品を提供しているから、どんなものでも躊躇することなくどんどん買える。ただし、まとめ買いのために訪れた大型スーパーには、格好のいいリンゴばかりを物色したからといって、文句をいう八百屋のおじさんもいなければ、何度のオーブンで何分焼いたらいいかを調理指導してくれる肉屋さんもいない。パリに限ったことではなく、フランス中どこの町や村でも、大型スーパーの位置づけはそれである。