世界でいちばん強い昆虫とはいったい何だろう?
体の大きなカブトムシ? するどい前足で、ほかの昆虫を捕まえて食べるカマキリ?
いやいや! アマゾンのジャングルには、そんな彼らですら逃げ出すような最強の虫がいるのだ。
グンタイアリというアリのなかまだ。
ジャングルの風来坊、グンタイアリ!

グンタイアリはとてもふしぎなアリだ。
アリなのに自分たちの巣をもたず、ずっとジャングルをさすらいながら生活をするのだ。

その旅の途中で出会った生きものは、すべておそってエサにする。
ヘビや大トカゲさえも、グンタイアリの大軍にとびかかられればひとたまりもない。
あっという間に彼らの食料になってしまう。
兵隊アリに噛まれても……?
また、鳥などに食べられそうになると、行列のボディーガードである「兵隊アリ」が活躍する。
この兵隊アリというのが、これまたすごい姿をしているのだ。

ものすごく大きな、マンモスのキバのように曲がった大あごをもっている。
ひとめで「こいつは凶暴そうだ!」とわかる、こわい顔。
行進にちょっかいを出そうものなら、鳥だろうと人間だろうと、彼らがその巨大な大あごをふりかざして襲いかかってくる。
試しにグンタイアリの行列に手をおくと、兵隊アリがすぐさま指に飛びかかってきた。
だが、様子がおかしい。
なかなか噛みつくことができずにいる。
やっと噛みついても、そんなに痛くもない。なぜだろう?

ぼくはそのワケをあごが長すぎるから、そして先がぐりんと曲がっているからじゃないかと考えた。
お箸だって、あんまり長いと食べものをつかみにくいし、つかめても力がうまく入らず、すぐ落としてしまうだろう。
先が曲がっていたらなおさらだ。
アゴの短い働きアリも負けじと噛みついてくる。
むしろ、兵隊アリよりもこっちの方が痛い。
アゴだけじゃない、「もう一つの武器」
じゃあなぜグンタイアリは敵をはさんでこらしめるための武器をこんなに長〜くしてしまったのか?
もしかしてカッコつけたかっただけ?
ふしぎに思いながら指に噛みついた兵隊アリをながめていると、指先が「チクッ!」と痛んだ。
目をこらすと、アリが指に噛みついたまま自分のおしりを突き立てている。

グンタイアリのおしりにはハチとおなじように毒針があるのだ(アリとハチは近いなかまの昆虫)。
なるほど痛いわけだ。
しかも、何度も何度もしつこく刺しつづけている。
追いはらおうと息を「プッ!」と吹きかけてみるが、がっしりと噛みついていてぜんぜん落ちない。
ここでピンときた!
「この大きなアゴは、ふりはらわれずに毒針攻撃をつづけるためのものなんだ!」