先日、前の職場の仲間から、パニック症に悩んでいることを告白された。
「誰にも話す人がいなくて、夫にも嫌われるんじゃないかと思って話せなくて。安藤さんがパニック症だったってA子から聞いて」と連絡をくれたのだ。

最近、パニック症を告白する有名人が増えている。ジャニーズの人気グループSexy Zoneの松島聡や一旦復帰したが再び休業をしたKing&Princeの岩橋玄樹、移動などに支障が出る広場恐怖症の千葉ロッテの永野将司投手など、みな一線で活躍しているひとばかりだ。

パニック症=不安やストレスと結びつけられるため、ネガティヴな要因が原因と思われることが多いが、実は「楽しくてやる気に満ちて仕方がない時」にもパニック症は起きる(詳しくは「『不安もなく楽しいのに』人生絶好調の私を襲ったパニック症」参照)。「新しい仕事」「やる気」「向上心」という明るいワードにもパニック症が結びつく可能性はあるのだ。

新生活が始まったばかりのこの時期は、そんな無理をしがちだ。編集・ライターとして長く活躍してきた安藤由美さんが、前回に続き、具体的な事例と共に「パニック症とのつき合い方」を探る。

夫の非協力からのパニック症

仕事仲間の話はこういうことだった。

カメラマンの彼女は39歳。ずっと子供がほしくて非協力的な夫を説得しつつ不妊治療を2年間続けてきた。しかし、金銭的にも体力的にもリミットを感じ始めていた。子供はほしい、でもできない。姉や妹の子供たちが成長していくなか、自分にだけなぜ子供ができないのか、悲しいが泣くと夫はもっと非協力的になる。言ってそんな答えがでない悩みの中で、通院の帰りの駅のホームでパニック発作が起きたという。

「私の気持ちが弱いからパニック発作が出てしまうのかと思うと悲しくて」と自分を攻めていた。私はただ話を聞いているだけだったが、彼女は話せただけで気持ちが軽くなったと言ってくれた。

心の糸が張りつめている時期に注意すべき

パニック症は、10~40代の比較的若い女性、親や姉妹など一等親でパニック症の人がいるとかかりやすいという意見もあるが、一概にそうともいえない――パニック症を含む不安障害などに詳しい、東急病院心療内科の伊藤克人医師は言う。

私自身、パニック症を発症したが、一親等にパニック症の人はいない。そして初めての発作は、やりたい仕事の企画が通り、仕事も楽しくてやる気に満ち溢れているときだった。

「私のところに来る患者さんを見ると、世代関係なく、男性も女性もいます。脳の機能不全で起こる説が有力ですが、まだ解明されてない部分も大きい。ただ、慢性的な不安感や持続的な緊張感は、不安発作の準備状態といえます。糸に例えるとわかりやすいのですが、ピンと張った糸は少しの刺激でもビンビンと振動してしまうものです。逆に弛んだ糸は刺激を与えても振動を起こしません。心もこれと同じです。ただ、慢性的な不安や持続的な緊張にはさまざまなものがあります。

・仕事が思うように進まず、終始仕事のことを考えている

・つきあっている人とうまくいかず、常に相手のことばかり思ってしまう

・親や配偶者が病気で入院して、どうなるか心配ばかりしている

こういったケースは、比較的わかりやすい慢性的な不安です。でも、一見頑張っているという状態も持続的な緊張状態といえます。安藤さんはこのケースといえるでしょう。やりがいのある仕事で、“もっとよくありたい”、“もっと認められたい”と頑張って自分を保っている。このときは満足感も自己肯定感も強いので、ストレスを感じにくいのかもしれません。

ですが、この気持ちが過剰だと“もっと上に”という気持ちが生まれてしまう。本人は気づかぬうちに、まだ足りないと頑張ってしまう。しかも頑張っているのに満足できず、自己肯定感も次第に行き詰ってしまう。安藤さんは当時、心の糸は過緊張で今にも切れそうなほど張り詰めていたと思いますね。それが、寝不足や眠気覚ましのカフェインの過剰摂取などの要因と合わさって、パニック発作という形で出たのかもしれません」

私は仕事の達成感に心が張り詰め状態だったが、今は仕事だけでなく、SNSなどで常に周囲に発信し、もっと認められないと、と頑張って自己表現しがちな時代でもある。さらに、20~40代の女性たちは、いまだに“婚活に勝つ!”、“必ず授かる妊活”、“素敵なワーキングマザーになる”、“ママきれい! って言われたい”と、さまざまな側面で必要以上に頑張る生き方を迫られる。仕事だけでも十分疲れるのに、それ以外の面倒なことにもヘトヘトになりがちだ。あなたの心の糸は張り詰めていないだろうか。