「殺される!」
深夜、瞬間的に目を見開いた。悪夢でも強盗でもない。今まで感じたことがないとんでもない恐怖感で飛び起きたのだ。

意味もなく死ぬ恐怖感が止まらない。ベッドで仰向けに横になっているはずなのに、ものすごいスピードで体だけ下へ下へと加速して落下していく。例えるなら遊園地にあるフリーホールやバンジージャンプが永遠に続く感じで、ギューギューと下に引っ張られるのだ。

「なにこれ?」「どうして?」なんて考える余裕はなく、「殺される、死にたくない!」「落ちる! 助けて!」という思いだけが次々頭に浮かぶ。しかも、恐怖のあまり声も出ない。落ちていく感覚に耐えるために、左手でベッドのフレームを握り締めるのが精一杯だった。

これが、私が最初に経験したパニック発作の症状だった。

ジャニーズの人気グループSexy Zoneの松島聡や一旦復帰したが再び休業をしたKing&Princeの岩橋玄樹、移動などに支障が出る広場恐怖症の千葉ロッテの永野将司投手など、最近、パニック症を告白する有名人が増えている。

パニック症を含む何らかの不安障害で悩む人の生涯有病率で9.2%(平成14~18の厚生労働省研究班調査)いると言われ、パニック症の認知度が上がった今は、有病数はもっといるのではないかと推測する声も多い。

米国では、今や10人に3人以上が、パニック症を含む不安障害を経験するといわれているという。また、パニック症の有病率は男性よりも女性のほうが2.5倍も高いといわれている(米国・NCS調査)。思った以上に身近な病なのだ。しかも、ネガティブな要因だけが引き金になるわけではない。新しい仕事を任されやる気に満ち溢れていた時期にパニック症にかかったフリーの編集者・安藤由美さんの実体験からパニック症を探ってみよう。

「死ぬに違いない」が止まらない

当時、フリーの編集をしていた30代の私は、大手出版社に仲間と出した雑誌企画が通り、新雑誌制作に携わっていた。依頼された仕事ではなく、自分で出した企画が好きな形で作れる。あれもこれもと企画が頭から溢れるような毎日を過ごしていた。

以前、こちらで書かせていただいた800万円の借金返済も終わり、自分がやりたい仕事を好きなようにできるという思いから、寝る間も惜しいような充実した日々を過ごしていた。朝早くから撮影に、取材、夜はデザイン入れに原稿書きと、夜中の1~2時まで仕事をする毎日を送っていたのだ。

その日は、夜中12時までデザイン事務所で打ち合わせをして、軽く食事をしてから帰宅をした。ベッドに入ったのは、3時半を過ぎていた。もともとベッドに入ると瞬間的に寝てしまうたちで、不眠で悩んだこともなかった。その夜も気づいたら眠りについていた。

そして、冒頭の症状が現れたのだ。症状が治まるまで、どれぐらい時間を要しただろうか。体感的には15分ぐらいに感じたが、実際はもっと短かったのかもしれない。奈落の底に落ちるような感覚は徐々に収まったが、「死ぬに違いない」という恐怖はなかなか拭えない。じっとしていると、また体が落下するような気がして、縄跳びをするようにしばらくの間小刻みにジャンプをしていた。