平将門がアプリゲーム、ニコ動に登場……いまも「兵」が愛される理由

将門関連傑作フィクションを一挙紹介!
乃至 政彦 プロフィール

昭和30〜32年(1955〜57)の海音寺潮五郎『平将門』(新潮社)は、先立って紹介した『風と雲と虹と』の原作小説である。大家らしい技巧が凝らされ、見所が豊富だ。人のいい将門が無数の悲劇に見舞われるところはドラマと同じだが、意外なところで相違点がある。たとえば、ドラマの将門は「新皇」に即位しないが、こちらではちゃんと即位して、それらしく振舞っているのである。これらの違いを探しながら読み進められるのがとても楽しい。

平成18年(2006)の高橋直樹『平将門:黎明の武者』(角川春樹事務所)は、キンメリアの『蛮人コナン』を彷彿とさせるバイオレンスな将門さまが登場する。ここでの将門は並み居る敵を打ち倒し、坂東を平らげるなり堂々と新皇に即位する。晴れの舞台で形式ばった儀式など無用とばかりに雄々しく振る舞う様子は、たまらなく格好いい。

ところでここまで将門をコナンに例えてみたが、名探偵を思わせる将門作品だけは見覚えがない。

史実の将門を見ると、「偶然にも平真樹と源扶の仲介に招かれた俺たちは……」とばかりに行く先々で殺人事件に出遭い、無実を訴える法廷劇があって、本人が発言せずとも「仏神の感応」によって真相が明らかになるというどこかで見たやりとりがたくさんある。すると〝名探偵マサカド〟も可能なはずだ。ぜひ意欲ある作家さんに挑戦してもらいたい。

ちなみに将門自身の智略も、なかなか傑出したところがある。例えば、長元元年(1028)の「平忠常の乱」で、忠常が坂東で将門以上に大きな争乱を呼び招いたとき、将門同様に自身の「私君」に言い分を伝えるべく京都に手紙を送った。

しかし、忠常は内大臣・藤原教通に直接書き送ってしまったため、京都で警戒していた兵たちに手紙を取り押さえられている。

これに比して天慶2年(939)に将門が書いた手紙は「私君」である太政大臣・藤原忠平に宛てた内容なのだが、宛先をその四男・師氏にして、事なく思いを届けられたらしい。忠平よりも師氏に手紙を送るほうが警戒が薄く、確実に届くだろうことを見抜いていたのだ。

もっとも新しいものでは、今年発売されたばかりの澤田瞳子『落花』(中央公論新社)がある。ここでの将門は脇役ながらも独創的な切り口で描かれていて、見る者の目を奪う。これはもう発想の勝利だろう。こういう読み方はあまり一般的ではないかもしれないが、文中に見える単語や概念理解から時代考証に使った論文を想像する楽しみ方もできる。

ここまで、紙幅の範囲で思いつくまま将門関連の歴史小説を紹介してみた。ほかにも人の心をクリティカルに打つ名品が隠れているので、皆さんの手で探してもらいたい。

将門がキーマンとして登場するアプリゲーム

今や将門はアプリゲームにも堂々登場する時代だ。セガゲームスの『D✕2 真・女神転生リベレーション』、Fuji&gumi Gamesの『クリスタル オブ リユニオン』ではキーマンキャラクターとされているが、どちらも史実というより伝承の特色を活かした人物造形に仕立てられている。

それでいて設定の細やかさは配慮が行き届いていて、一部の歴史ゲームにありがちな粗雑さはまったく感じない。このことからも将門は今もまだ強い愛を集める歴史人物なのだと思わせてくれる。

将門を楽しもう!

以上、自著刊行にかこつけて、自分好みの将門作品を思うまま紹介させてもらった。もしこれが将門の話題活性化に繋がれば嬉しい。

みんな、もっと将門を楽しもう。

それがなによりも将門を〝祟り〟から解放する有効打となるはずである。もし拙著『平将門と天慶の乱』がそのために資するなら、本望これに過ぎるものはない。