平将門がアプリゲーム、ニコ動に登場……いまも「兵」が愛される理由

将門関連傑作フィクションを一挙紹介!
乃至 政彦 プロフィール

全編が今も視聴可能な最古の大河ドラマ

すこし回り道をしてしまった。そろそろ本題に入ろう。将門に関連する傑作フィクションの紹介である。

まず真っ先に紹介しておかなければならないのは、昭和51年(1976)のNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』だろう。本作は全話が今も保存されている最古の大河ドラマとして有名だ。

原作は、海音寺潮五郎の『平将門』と『海と風と虹と』の二つで、前者はタイトル通り将門が主人公で、後者は藤原純友を主人公とする長編小説である。

本作の加藤剛演じる相馬小次郎将門は、歴史ドラマ史上でも指折りの熱演である。また、将門の従兄弟にして親友であった山口崇の平貞盛も惚れ惚れする名演で魅せてくれる。

いかなる運命の悪戯によるものか、ふたりは不倶戴天の宿敵と化していく。小洒落た都会人と、素朴な田舎人の友情が取り繕えなくなってしまう悲劇、そこから広がる群像劇、愛と信義を越えた革命──。こうして織りなされていく人間ドラマは、今もなお色褪せていない。

また、小次郎将門が物語の展開に応じて、ビジュアルを変えていくところも見逃せない。

はじめのうち将門は小綺麗でさっぱりした顔つきをしている。だが、重要な合戦に大敗して潜伏生活を強いられると、無精髭が増え、やがてよく知られる乱髪・虎髭へとその姿を変じていくのだ。

先に軽く述べた将門のイメージ変遷史を踏まえたうえで、本作の完全版を視聴してもらえれば、一個の奇跡を味わえるだろう。

〝誠実な人〟として評価の高い加藤剛が演じる将門は、本作で徐々に悪王らしい姿へと転じていくのに、それがかえって坂東の高潔な英雄らしくなっていくのだ。その装いは完璧で、舌を巻くほかない。

まさかのマサカドインパクト

ついで、映像作品でも異色中の異色作を紹介させてもらおう。〝護法少女ソワカちゃん〟シリーズである。

本シリーズは、もともとニコニコ動画に投稿された個人の作品だった。それがたちまちカルトな人気を博して、一気にDVDソフト化される流れを得た。本編はすべてニコニコ動画で無料視聴できるので、いつでも気軽に楽しめるのが嬉しい。カラオケのJOYSOUNDで歌える曲も多い。

このうち、将門が登場するのは「再生と法滅のあいだ」である。ここでこの世界の根幹に位置する〝マサカドインパクト〟の実態が明かされた。このときの将門は例のごとく乱髪・虎髭の形相で、しかもその顔色は呪わしくも桔梗色に染まっている。

実を言うと、わが将門に対する印象を一変させたのが本作である。すでに死して1000年余りのときが過ぎているのに、まだこれほど強烈な存在感を放ち続ける将門とは何者なのだろうという疑問が、胸のうちに芽生えたのだ。おかげで『平将門と天慶の乱』を書き上げることができた。願うべくなら、ソワカちゃんシリーズもそろそろ一度、結末を見せてもらいたいものだ。

(これからソワカちゃんを楽しみたいという方には、楽曲の評価が高い「虚空蔵からのメッセージ」「修羅礼賛」からの視聴をお勧めしたい)

将門の歴史小説

それではいよいよ歴史小説の紹介に移ろう。こちらも名品が揃っている。有名なものを4点ばかり並べてみたい。

昭和27年(1952)の吉川英治『平の将門』(講談社)は今でも割と読まれているらしい。ここでの将門は未開地の大地を生きる力持ちの若者のようである。将門作品中の「未来少年コナン」とでも呼ぶべきだろうか。「もう見ていられない!」という気持ちにさせられること間違いなしの将門だ。