動画告発がカラ振りに終わったゴーン被告が採るべきただ一つの戦法

二つの国を相手に闘うには…

「陰謀」の一本押しでは…

「世界が注目した」といって過言ではない事件への見解を述べた動画のなかで、カルロス・ゴーン被告が繰り返し訴えたのは、事件が「陰謀」によってデッチ上げられた、ということだった。

動画は、4月9日、日本外国特派員協会の記者会見で弘中惇一郎弁護士が公開、「陰謀という筋書きは重要なポイント。刑事弁護に役立たせる」と、追認した。

内外の記者が集まり、身動きが取れない会場で2人の見解を聞いていた私は、正直、落胆した。実名は語らなかったが、陰謀を仕掛けたのは日産の「数名の幹部」で、「汚いたくらみを実現させるべく、仕掛けた多くの名前を挙げることができる」という。

それでは事件を矮小化させるだけである。

 

確かに、始まりは「日産をルノー傘下にしたくない」という幹部らによるクーデターだった。だが、そこに官邸や経済産業省の国家戦略が重なり、「特捜部の威信回復」という検察の思惑が相乗りして国策捜査となり、内紛の枠には収まらなくなった。

陰謀という意味では、仏政府にも企みがあった。フロランジュ法の成立によってルノーの議決権を2倍にしたマクロン政権は、ゴーン被告を追い込んで、「不可逆的な関係」に持ち込もうとした。日産をルノー傘下に入れるのである。

それを察知した日産幹部のクーデターをきっかけに、「日本の逆襲」に遭った。

それに対して仏政府は、昨年11月の「ゴーン逮捕」の当初、日仏対決に持ち込んで日産に対する敵対的TOBをかけることも選択肢のひとつだった。今年1月24日までゴーン被告をルノー会長職にとどめたのは、「推定無罪の原則」というおためごかしではなく、「ゴーンの罪」を確認しつつ、ルノーと日産の在り方を考察する時間稼ぎだった。

ゴーン被告をルノー会長から退任させ、新会長に選ばれたのはジャンドミニク・スナール氏だった。

ブラジルに生まれ、レバノンに育ち、フランスのエリート養成校で学び、3カ国の国籍を持つゴーン被告だが、依って立つ基盤は、レバシリの逞しさでありしたたかさである。かつて大シリアとして同じ国家だったレバノンとシリアは、レバシリと呼ばれタフネゴシエーターを輩出、その代表的存在が世界の自動車業界に燦然と輝くゴーン被告だった。

レバシリのゴーン被告から貴族出身のスナール氏へ。その時点で融和策にカジは切られ、3月12日にはルノー、日産、三菱自動車の「新たな合議体」の設置が決まった。

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