史上初、ブラックホールの撮影に成功! 

人類が初めて目にする「黒い穴」
本間 希樹, ブルーバックス編集部 プロフィール

いよいよ見えるブラックホール

巨大ブラックホールにはまだ多くの謎が残されています。その最大の理由は、これまでの観測では、ブラックホールを分解して見ることができなかったからです。

もしブラックホールをちゃんと分解して写真に撮ることができれば「黒い穴」が見えるはずです。さらに、ブラックホール周辺での降着円盤やジェットの構造も見えれば、巨大ブラックホールというシステムの理解が飛躍的に進むはずです。

ブラックホールを見るためには、なるべく見た目の大きい天体が有利です。具体的には、なるべく重くて近いブラックホールが、見た目が大きくて観測しやすい天体になります。

これまでの観測からわかっている範囲で、ブラックホールの見た目の大きさのランキングをまとめると、表のようになります。

ブラックホールの見た目の大きさのランキング(『巨大ブラックホールの謎』より)

ランキングの堂々の第1位は、やはり天の川銀河の中心にある、いて座Aスター(Sgr A*)になります。当たり前なのですが、私たちの住む銀河系の中にあって距離が近いことが大きくものをいっています。

質量が太陽の400万倍、距離が2万5000光年のところにあるため、その見かけの大きさは10マイクロ秒角になります。「度」の単位に直すと、およそ4億分の1度です。

見かけの大きさがいかに小さいかを体験してもらうために、頭の中に月を思い浮かべてください。そして、その月面に1円玉が1枚おかれていると想像してください。

4億分の1度とは、この1円玉を地球から見たときの大きさです、といえばどれくらい小さいかが想像いただけるのではないでしょうか。見かけの大きさが「最大」のブラックホールとはいっても、実際はそこまで小さいのです。

ブラックホールの「影」

いて座Aスターが本当にブラックホールであることを証明するにはどのような観測をしたらよいでしょうか?

ブラックホールの強い証拠となるのが、ブラックホールの「影」である「ブラックホールシャドウ」を検出することです。

ブラックホールはその定義から、まったく光を出しません。一方で、ブラックホールは重力で周囲のガスを集め、そのガスが降着円盤として明るく輝きます。

このような明るい円盤を背景に、ブラックホールの光が出てこない部分が黒い影として見えるのが「ブラックホールシャドウ」と呼ばれるものです。

目指せ、視力300万

ブラックホールシャドウを捉えるには、これまでにない高い視力を持った望遠鏡が必要になります。

たとえば、いて座Aスターの見かけのブラックホールの半径は10マイクロ秒角であることはすでに述べましたが、予測されるシャドウの大きさはその数倍から5倍程度になります。

これを見るのに必要な望遠鏡の性能を、私たちが健康診断などで測定する「視力」で表せば、最低でも視力300万になります。

望遠鏡の視力は(観測する電磁波の)波長と口径の比で決まります。波長が短いほど、また、望遠鏡の口径が大きいほど、細かいものが見分けられるようになり、高い視力が達成されます。

望遠鏡の口径に関しては、遠く離れたところにある望遠鏡どうしを組み合わせて、ひとつの大きな望遠鏡として利用する超長基線干渉法(VLBI)という技術があります。この技術を使えば、地球の直径と同じ大きさの望遠鏡でブラックホールを観測することができます。

この地球サイズの望遠鏡で、ブラックホールシャドウを観測するのに必要な波長は1ミリメートル程度かそれ以下、という値になります。